侍と暗殺者
2012/08/15



ポップン



「また来たのか」

その言葉にこくりと銀髪の少年は頷いた。顔に赤いペイントのあるどこか影のある少年。青年と呼ぶには少し早いだろう。

「待ってろ。茶でも入れてきてやる」

古きよき日本を思うかのような、縁側。そこからすくりと立ち上がり、着流しを着た水色頭の侍は奥へと消えた。
銀髪の少年は言われた通り縁側に腰掛け、ぼんやりと彼を待つ。特に彼とは会話が続くわけでもなかった。それでも一緒にいるのがどこか心地良かった。神でもない、上司でもない。彼の雰囲気がとても少年は気に入ったのだ。
ふと少年の目に入ったのは自分が来るまで手入れをしていたのだろう、彼の愛刀。名前なんか知らない。綺麗に磨かれたそれは自分の顔が映る。紅い紅い目がそこには映し出された。

「刀がどうかしたか?」
「え?」

見入ってしまったのだろう。気配には敏感だというのに声をかけられるまで少年は気付かなかった。
ほれ、と侍から湯呑みを渡さる。暖かい緑茶が湯気をたてていた。

「じっと見てるじゃねぇか」
「あ…手入れ、行き届いてるなって」
「そりゃ、大事なもんだからな」

見ればわかる。大事に大事にしているんだということくらい。刀に関する知識はなくとも、武器の手入れについてはある程度わかっている。しかし少年にはここまで魅せられるような手入れは出来ないと思う。

「切れたら痛ぇぞ?」
「けど、多分、不意だったら、切られたこと理解するまで、時間かかる」
「ほう。ジャック、刀がわかるのか?」
「ううん。でも、少しなら」

ジャックとよばれた銀髪の少年の影の原因だろう。"そういった世界"で生きていたのだろう彼の。
少し間が流れる。ゆったりとした風が吹き、両手に持った湯呑みからじんわりとした暖かさが伝わる。隣では侍が茶を啜る音もする。

「…なあ、六」
「ん?」
「オレ、ここ好きだ」
「そうか」

素っ気ない。けれどもジャックは気にしなかった。六がわちゃわちゃと騒ぐタイプではないし、とやかく聞くタイプでもない。
ジャックにはそれが心地良いのだ。

「まあ、気の済むまで入りゃあいい」
「…うん」

二人の口角が少し上がったように見えた。




----------
こうやってジャックは六の家に
住み着けば良いと思う。
もちろん上司はヴィルヘルム。
もちろんてわかる人にしかわからん。
普段放浪していても
うちの六には家がある設定です。
だってメルヘン!

ジャックは二寺の世界からきた設定。
暗殺者ですしね。武器くらい、ね。
でも少年。15歳前後。






prev | next


「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -