小さなお店
2012/03/10




「さっわだちゃーん!」

元気の良い声が響き、呼ばれたと認識した時にはすでに重たい物が綱吉の身体にのしかかっていた。べらべらと喋るそれが人だと認識するのに数秒要して、同時にかつての同級生だとわかりため息をついた。

「…ロンシャン」
「あ、わかった?やっぱオレら友達だよねー。長いこと会わなくてもわかるなんてさ!」
「わかったからどけ」

買い忘れていた醤油の袋を男に打ち付けて振り払う。基本的にテンションの高いこのロンシャンと呼ばれた男。山本や綱吉と同級生で、見た目からして変わり者でやはり彼女も変わり者である。

「なんでこっちいんの?」
「沢田ちゃんに会いに来たのって嘘だよ違うよ、出張」
「次期社長自らとはご苦労様だね」

次期社長。ロンシャンはそこそこ大きな、老舗の企業の息子である。本社は日本にはないはずだが、やはり大きな会社故に支店はいくつもある。それこそ世界中に。
えらく出席したと思う同級生もいるだろうが、綱吉は前々から知っていたのでやっぱりなくらいの認識だ。

「できるできないじゃなくて、出来るっつー実力がないといけないから。オレならバッチリだけど!沢田ちゃんは?」
「今は小さいカフェレストランの個人経営してるよ。オレと母さんと従業員二人で」
「あら、ほんと小さい。意外だなー。大丈夫なの?」
「大丈夫。常連ばっかだけど今んとこは赤字経営だし」
「こっち来ないわけ?来たら歓迎すんのに」
「やだやだ。高校ん時は向こう手伝ってたけど今はしてないし。勧誘がひどいよ」
「そりゃそうよー!沢田ちゃん意外と手腕だからね」

ケラケラと笑う彼にやはり変わっちゃいないと綱吉も笑みを零した。もちろん歳相応ではないが、中学の時よりかは落ち着いてはいる。

「沢田ちゃんの親戚が呆れてたよ。諦め悪いって」
「そりゃ嫌だっての。つかXANXUSに会ったの?」
「まあね!大きなどっかのパーチーになると顔合わせたりするから。彼も中々やりおる」
「やりおるってお前どうした」

スーツを着た男と普段着で醤油の袋を持った男。見た目の違和感はあるが、そこは久しぶりに会った者同士で溶け込めるのだろう。
しばらく雑談した後にふとロンシャンが言った。

「今日の夜暇?」
「うん?まあ暇だけど」
「二人でキャバクラ行こう!」
「却下。お前となんて行きたくない」
「なんだよつれないなあ。沢田ちゃんノリわるーい」
「嫌だろ!趣味が違いすぎるわ、何がでてくるかわからんわ、怖すぎ」
「ひどすぎね?じゃあ飲みに行こう!」
「それならいいよ」

言うなれば早いと適当に約束を取り付けて、まだ仕事中だとロンシャンは去って言った。ぶんぶんと大きく手を振る彼はスーツを着ていようと社会人に見えがたい。苦笑しながらも綱吉も小さく手を振り、踵を返して店へと帰っていく。

「ロンシャン君」
「だーいじょぶ。仕事はやるって」

止まっていた車に乗り込んだロンシャンの表情は、きりりとした社会人だった。







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内藤ロンシャン 24歳
でかい老舗企業の息子。憎めないハイテンションキャラで基本的にポジティブ。ごくたまに二日程無気力でネガティブになる。
綱吉達の中学生からの同級生。同校の先輩である雲雀には賑やかすぎて煩いと疎まれている。
彼女になる女性は皆さん個性的。妖怪とまで言われたりなんてするが、本人達はきにしない。むしろロンシャンはお構いなくで溺愛の域である。
馬鹿なキャラだが、やはりそこは次期跡取りの為、仕事はできる。できなくてはいけない、ではあるが。
綱吉の親族とはたまに会えど、滅多に綱吉には会わない。山本達とはまた違う意味で親しい友人。


そろそろ何かアクション起こそうかな
とか思い中。思うだけ。



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