小さなお店
2011/10/17




「どうした?風邪か?」

本社に戻っていたリボーンが帰って来たのは十月も後半に差し掛かった頃だった。一ヶ月程本社にいたリボーンはまたもお土産、名産らしいチーズを持ってナッツに現れた。

「や、胸やけ。最近主食がお菓子なんだよ」

リボーンの楽しみである昼食の頃には来れず、結局仕事をしていれば残業するはめになってしまった。夜の営業もギリギリ閉店前にナッツへと来た。バイトのハルは暇になってきた九時で帰らせてある。
彼が来たのは夜十時前で、がらりとしていた。促されるまま注文をして席につくなり、綱吉の顔色が優れないことに彼は気付いた。体調が少し悪いと綱吉はリボーンに気づかれてしまうので、普段は隠しているが、彼の前では無駄だと諦めている。

「子どもか」
「やー、大量に溢れてしまってね。誕生日だったんさ、オレ」
「知ってるぞ。それとこれで何の関係がある?」

ありありだ。そう言いながらエスプレッソをリボーンの前に置く。頼んでもいないので、不思議そうな顔をしたがいつも頼むからか、と結論付けた。

「プレゼントで貰ったんだよ。生物ってか早めに食べなきゃいけないやつは食べたんだ。でもまだクッキーやら和菓子やらが残ってる」

獄寺からはチーズケーキ、ハルと京子からはそれぞれ手作りクッキー、山本からは地元にいないからと宅配便であんこにつつまれた赤福が送られてきた。あれからちょくちょく来る六道兄妹からもフィナンシェやらのちょっとした洋菓子の詰め合わせをいただき、他にもリボーンの同僚コロネロや常連客からプレゼントと称して洋菓子、和菓子などの食べ物を貰ったのだ。大半が食べ物だったため、雲雀からの日本茶と了平からの日本酒がすごくありがたかったらしい。

「そりゃ大変だったなあ…」
「せっかくオレの為にくれたんだから、食べないっていう選択肢はないからね。母さんと一緒に食べてるよ」

いくら甘い物が好きだといっても限界はある。その限界に今綱吉はチャレンジしてると言っても過言ではない。
奈々はといえば、そんな息子をよそ目に日々美味しそうにそれらを食しているのだが。

「あら、でも皆のとっても美味しいわよ?」
「美味しいけどね。帰って来ないくせに父さん達からも送ってきたから量が量なんだよ」

美味しいと言った通りハズレはなかった。まずくはない、ではなくすべて美味いのだが、それでもこうも連続して食べたいと思うわけではないのだ。
更には父親からと届けられた箱は大きく、中には一気に済まそうと考えられたのだろう。父親、祖父のような人物、ある親戚とまとめて三人分送られてきたのだ。父親と祖父のような者からはそれはそれは何人分だよ。と綱吉が突っ込む程に大量の菓子類で、考慮してくれたのか親戚はシャンパン一本と、それは嬉しかった。

「当分お菓子はいらないや」
「それはそうね」
「一体どんだけ菓子尽くしの生活してんだ」
「まじ勘弁だよ」

スナック菓子やら菓子と名のつく者は大好きだと豪語する綱吉が言うのだから、よっぽどだとリボーンは思う。そこまで得意ではないリボーンにとっては拝むだけで引きそうだ。

「はーい、お待たせ」

軽口を叩いていてもやることはしている。野菜炒めとのことで、奈々はみそ汁を温めてご飯や漬物を盛り、綱吉が肉と切ってある野菜を炒めていた。

「いただきます」

お盆に乗せられたそれらを受け取ると、久しぶりだと言わんばかりにリボーンは箸をつける。見た目からは想像できない程、彼は和食を好んでいる。

「リボーン君も誕生日だったのよね」
「ツナの一日前だ」
「でね、プレゼント」

はい、と渡されたそれはタッパーだった。プレゼントと言われてイメージするのはラッピングされた物だったり、箱だったりするわけで、タッパーなんてものがプレゼントだということは初体験だ。割と何事にも動じないリボーンでも少々面食らう。

「自宅で食べれるナッツの味、だ」
「開けても?」
「もちろん」

箸を置いて開ければ炊き込みご飯だった。山菜やキノコが具だくさんに入っている。

「期間限定でしようと思ってるの」
「秋の味覚をふんだんに使ってさ。ただ五十円アップだけどね」
「ほう。いいんじゃねーか?その最初がオレか」
「そういうこと。もちろん昼間は喫茶店的なこともうちの店はやってるから、甘味と称して栗を使ったお菓子もやるけどね。ちなみに最初のエスプレッソもプレゼント」

本来は中頃でやる予定だったのだが、菓子類を作りたくないという綱吉の弱音でここまで伸びたのだ。

「またそれも食べに来る。こっちは家でいただくとするぞ」
「感想よろしくね」
「まかせろ」

ふふんとご機嫌に笑ってリボーンはタッパーを閉めた。ナッツの味が好きなリボーンにとって、家でも食べられるということは魅力的なことなのだ。

「オレもな、あるぞ」
「なにが?」
「ほれ」

とん、と鞄から出してテーブルに置かれたのはワインだった。

「ツナへのプレゼントだ」
「まじで!貰っていいの!?」
「有名所だからわかるだろ」
「キャンティ!しかもクラッシコ!」
「ちゃんとテイスティングもしてきた。まずいと言われちゃたまらんからな」
「…すみませっ」
「チョコと迷ってこっちにしてよかった」
「私はチョコでもよかったのに」
「まだ食うの…」

呆れた綱吉とうふふと笑う奈々にリボーンも笑いながら食事を再開した。






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誕生日祝えなかったから、ね。
ワインは飲まないので
詳しくないためわかりませんが
キャンティ・クラッシコは
イタリアの伝統的製法で作られた
名産ワインらしいです。
親戚から送られたのはピンドン
だったりするかもしれない←

ちなみに獄寺のは原作からよく出るケーキさん。六道兄妹のはイメージ的に関西では割と有名なアン〇ノールのような洋菓子かヴィタ〇ールみたあなチョコ菓子。全国?
山本は言わずもがなで、了平は大吟醸とか剣菱とかかな。全然違うってね。笑
剣菱みたいな男臭い酒が似合いそうだ了平。雲雀は玉露。京都からのお取り寄せ。

リボーン、綱吉!おめでとう!!



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