巡り会いてV | ナノ

玄関の外からノッカーを鳴らす音がしてアリスがドアを開ければ、そこには予定通り長門を連れた小南が立っていた。

「いらっしゃい、小南、長門」
「悪いわね、木ノ葉も大変なのに・・・」
「すまないな」

二人を中へ招き入れたアリスは先を歩いて部屋へ案内していく。珍しそうに周囲を見渡しながら歩く長門と小南に家の構造を簡単に説明しながら、やがて一つの部屋に辿り着いた。
ノックをしてから振り返って少し待っているよう告げると頭一つ分ほどドアを開ける。そしてそこから顔を覗かせて中にいる人物に声を掛けたようだった。

「──それじゃ、長門、小南、入って」
「誰かいるの?」
「えぇ・・・大丈夫よ、貴方達も良く知っている人だから」

柔らかい表情のまま言ったアリスがドアを開けて、部屋に入れられた二人はベッドに体を起こす人物──イタチに目を見張った。目元に包帯を巻いた状態でも正確にこちらを向いて頭を下げる。

「お久しぶりです、リーダー、小南さん。話はアリスから聞きました」
「イタチ・・・お前は死んだと聞いていたが」
「それについては後で話すから、長門は先にベッドへ」

小南に支えられて移動した長門はやはり疲れていたようで布団をかけたところで深く息を吐く。アリスは少し離しておいてある二つのベッドの間に入って話をする体制を取ると、イタチがここにいる経緯と長門達がここへ来た経緯、ついでにサソリは砂の里にいるという話をさっとまとめた。

「──でもアリス、大丈夫なの?イタチが生きているという事をマダラは知っているのでしょう。そしてここにいる事も」
「奇襲をかけてくるのではないかという心配?それなら大丈夫よ。わたくしの家があるこの森は少し特殊でね、誰でもここに辿り着けるわけではないから。
 それにイタチが生きている事をバラされる心配もないわ。現在の暁は戦力不足だからイタチの生存が知られてサスケを手放さざるを得なくなってしまうのは避けたいはず」

だから問題ないはずだと、少し考えながら上げられた理由に、長門と小南が「そうか」と納得の意を示した。

────────

「小南、もう行くの?お茶を入れようと思ったのに・・・」
「ありがとう。でもあまり長居して万が一マダラ達に感付かれたら困るでしょう」
「・・・それもそうね」

玄関先にて小南を引き留めていたアリスが眉を下げる。確かに木ノ葉に来ていたこと自体知られたらまずい。それにペインのことで雨隠れも少し騒がしくなるだろうから、小南はその対応をしなければならないはずだ。

「気を付けて・・・長門はなるべく早く帰れるように療養を急ぐけれど、あれだけ衰弱していては流石に多少の時間がかかるから・・・」
「急がなくても大丈夫よ。でも本当にごめんなさいね、里の事も立場の事もあるのにこんなこと頼んで」
「良いの。ナルトにあのことを言われては動かざるを得ないもの」

仕方なさそうに言って軽く肩を竦めたアリスに小南は少しだけ頬を緩めて背を向ける。

「それじゃ、あとは頼むわね。私の方でも少しやりたいことがあってその準備をしないといけないから時間がかかるし、長門をゆっくり休ませてあげて」

小さく笑って言った小南にアリスは首を傾げて疑問を浮かべたが、彼女は「大したことじゃないの」とその話を終わらせて長門の事を頼むと家を後にした。

────────

部屋に戻ってきたアリスは手早く長門の身体を診て薬の調合をする。そして薬草特有の少し鼻をつく匂いのする飲み薬を飲ませた。

「もう、何をしたらここまで衰弱するのよ。両足の包帯は・・・怪我?解いても構わないかしら」
「あぁ。昔負った火傷だ」
「では失礼。
 昔ってどれくらい?医者には診せたの?」
「そうだな・・・もう二十年ほど前になるか。医者には診せていない。処置は小南が調べてやってくれていた」

ハラリと包帯を解いたそこには変色した火傷痕が広がっていて、アリスは何か疑問があったのか小さく首を傾げる。
火傷痕が予想以上に綺麗だ。長門が一人で歩いているところは見ていないため歩けない原因は火傷かと思っていたが違うのか。

「どうした」
「いえ・・・火傷、かなり範囲が広いわね」
「あぁ。当時は白く変色してな。あの火傷から動かなく「白く変色した?なら水疱は?」あ、あぁ・・・水疱はなかったはずだが」

その時の事を思い返しながら言葉を返す長門にアリスは考え込むように少し俯いた。
火傷の深さというのはT度からV度に分けられる。白く変色して水疱が出来なかったという事はその中でも一番重症のV度だ。それを医者に掛からずここまで──。

「・・・ねぇ、小南がどんな処置をしていたか覚えている?」
「処置・・・?確か洗ってから軟膏を塗ったラップを巻いて、その上からガーゼと包帯を巻いていたな。当時はこの程度の処置しか出来なかった」
「ラップは毎日変えていた?」
「あぁ、あとガーゼもな。治ってきてからは二日三日に一回になったが」
「──この処置、湿潤療法といってね・・・」

湿潤療法──創傷(特に擦過傷)や熱傷、褥瘡などの皮膚潰瘍に対し、従来のガーゼと消毒薬での治療を否定し、「消毒をしない」「乾かさない」「水道水でよく洗う」を3原則として行う治療法。
しかし場合によっては化膿したり敗血症など重篤な感染症を引き起こしたり創傷治癒の遅延を来たす症例もあって、感染症では死亡例もある。
が、長門に聞いたところ幸いにも化膿も感染症もなかったらしい。

「こまめに処置をしてくれた小南に感謝するといいわ。貴方、歩けるようになるかも知れなくってよ」
「・・・本気で言っているのか。素人目に見ても当時の火傷は酷いものだったぞ」
「長門が歩けなくなった原因は火傷そのものではなく療養の過程で足を動かさなかった事による拘縮。湿潤療法の長所の一つは痛みが少ない事だから治療と同時に拘縮を避けるための運動も行っていいのだけれど・・・ずっと安静にしていたのね」

足を診て状態を確認したアリスは新しい包帯を巻くと布団を掛け直した。傍らに置いてある台に広げていた内服薬の材料を片付けて新しく点滴の用意を始める。

「手術とリハビリと薬で何とかしてみるわ」
「出来るだけ早くしてくれ。マダラの事もある・・・小南が心配だ」
「分かった。とはいえどうしても時間がかかるわよ」

掛布団を少し捲られて腕に点滴の注射針が刺されるのを見ながら、長門は「あぁ」と小さく呟いた。


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