とある建物の会議室にて、木ノ葉隠れの上役達は大名を始めとする火の国のお偉いさま方と顔を突き合わせていた。 議題は言うまでもなくペインの襲撃による木ノ葉半壊についてだ。ペインの術に巻き込まれた里人を庇ったため昏睡状態にある綱手、そしてイタチと長門の事があるアリスは欠席である。 「“暁”の対処は我々と同盟国とでこれからも続けていくつもりだ」 「里がああなってはな・・・。我々火の国としても里の復興を全力で支援する」 「まずは予算を組んで他国との緊張を」と火の国側から提案が出かけたが、ここでダンゾウから待ったが掛かった。 先にやることがあると、新たな火影を誰にするかだと、静かながら強い口調で言う彼に上忍班長として同伴したシカクが顔を顰める。 「綱手の体調が戻るまで待てばいいのではないかえ?」 「大名様、綱手は昏睡状態が続いております。里がこの状態でいつ目が覚めるやも分からぬのでは里の方針も上手く決めかねますのでな・・・。それに木ノ葉を壊滅させた責任もある」 「ふむ。今度こそ自来也だと思ったがのう・・・余はあやつが好きじゃった。だが聞くところによると片腕を失って療養中だそうではないか。それではのう・・・。 ・・・で、他に誰かおるのかえ?」 「それならばこの──」 大名のその問いを待っていたというようにダンゾウが声を上げる。が、それに被せるように「はたけカカシを推薦する」との意見が出てきた。ダンゾウは声を上げた人物──シカクに睨むように目を向ける。 忍界に名が知れているだけあって火の国側の反応はまずまずだ。誰の弟子だったかという問いに返ってきたのが四代目火影という事もあり、大名は表情を明るくさせる。 そして四代目は自来也の弟子で自来也は三代目の弟子とまで繋がるとカカシが火影にすると決めたらしく口を開いた。がしかし── 「三代目のその教えが、里を壊滅させたも同然なのですぞ! 里を潰した“暁”のリーダーはかつて自来也の弟子だった男だ。他国に同情し戦力を与えた結果がこれだ」 ダンゾウの低く威圧感を感じさせる物言いに大名が言葉を止めた。もともとのんびりとした性格の大名ではこのまま押されてしまうのは目に見えている。シカクは心の中で舌打ちを零すと「ならば」とダンゾウを遮った。 「アリス様はいかがでしょう。過去の火影代理での実績と信頼がありますし、三代目と師弟関係にありながら厳しい考えも持ち合わせていらっしゃいます」 「おぉ、金蘭か!あれも随分と綺麗になった・・・何より刺々しさが無くなって丸くなった」 「だがあやつはもう金蘭という地位に納まっている。それにだ、いくらあの女が里本位の考えだろうとも三代目に忠実すぎる。あやつを火影に据えたとて結局はヒルゼンが指揮をとっているのと同義」 「しかし「甘いのだ!何もかもが!」」 鋭く響いた一喝に部屋が静まる。 代々続く甘さが同盟国の砂の裏切りや大蛇丸の木ノ葉崩しを許したと、暁の台頭や抜け忍となったサスケの暗躍に繋がったと、目の前の火の国の重役達を見据えながら切切と語るダンゾウ。 シカクの表情が苦虫を噛み潰したようなものになった。 「確かにアリス様は三代目に忠実すぎる節があります・・・が、事国事に関して手を抜くなどあり得ません。 大名様、里が半壊という現状では新しい火影を選出するよりも過去にその責務を担っていたアリス様か三代目をつける方が里の混乱が少なくて良いのではないでしょうか」 「ふむ、そうじゃのう」 「だが先ほども言ったように三代目の教えが今回の事件を招いたも同然。そして金蘭はうちはサスケの管理不行届きで見す見す抜け忍になることを許した。・・・甘いと言っただろう! 今こそ必要な火影とは!?この最悪の事態の後始末をし、忍の世界に変革を成し忍に掟を徹底させる──稀代の火影、このワシだ!!」 ガタリと席を立って宣言したダンゾウに周りは圧倒されたように静まり返る。張りつめた雰囲気が続く中、おもむろに火の国の役人の一人が大名に目をやって口を開いた。 この際ダンゾウに任せてみてはどうでしょう、と。 考え込む大名に反対の意を示そうとしたシカクだがしかし── 「うむ、決めた。 ダンゾウ、お前を六代目火影に任命する!」 皆まで言う前に、その決定が下されたのだった。 [ back ] |