日が沈みあとは寝るだけとなった時間帯、アリスの家を訪れる者がいた。玄関を開ければ見慣れた顔がそこにいる。 「サスケ?こんな時間にどうしたの」 「今から里を出る」 「・・・里を出る?もしかしてイタチの所に?」 いつもより張りつめた雰囲気に少し首を傾げて聞けばサスケは無言で一つ頷いた。 そうか、とうとう一族の敵討ちに行くのか。 軽く俯いて考えた後、もう一度サスケと目を合わせる。 「この時間に来たという事は一人で行くのね」 「あぁ。大蛇丸の所で必要な仲間を集める。ついでに大蛇丸も殺してくる」 「ついでって・・・でも本当に良いの?少し待ってくれたらわたくしも行けるのに」 「どの道決着は俺一人でつけるからな。わざわざアリスを連れて行くわけにはいかない」 「そう・・・」 この二年と半年で、サスケは本当に強くなった。木ノ葉でも屈指の実力だと言えるほどに。 イタチと戦ってもきっと遅れは取らないだろう。 心配していないといったら嘘になるがサスケにはサスケの計画がある。そして自分にも自分の計画がある。 ここからが正念場だ。 深く呼吸をしたアリスの名を、サスケが呼んだ。 「俺は絶対にイタチを超えてみせる。お前の弟子なんだ・・・負けるわけがない。今まで俺のために時間を割いてくれて感謝している。 ──そ、それで、だな・・・その、もしイタチを超えて、それで帰ってこれたら・・・その、あー…対等な立場、というか…もっとだな・・・」 「弟子卒業という事かしら。構わないわよ。元々修行仲間のようなものだしサスケは十分強いもの」 「あー…そうじゃなくて、だから・・・もっとお前の近くに…その、仲間という意味じゃなくてな・・・」 目を泳がせてしどろもどろに話すサスケ。 今の自分はアリスにとって弟子であり仲間でありチームメイトでもある。勿論それでも十分アリスに近い存在だ。だが本当に求めているのはそこではない。 里の人間として守られる立場にいるのではなく、もっと近くに、手を取り合ってこれからを共に歩める存在になりたい。 そんなサスケの心境を察したのだろうか。アリスは少し深刻な表情で考え込んだ後、穏やかな表情でサスケの手を取った。 「分かったわ。考えておく。・・・だから、ちゃんと帰っていらっしゃいね」 「あぁ、ありがとう」 目的を遂行して里に戻ったとしてもそんな関係になることはないと分かっていたけれど。 それでも里の人間は全員保護対象であるアリスにそこまで言わせたのだ。今の時点では不満はない。 「いってらっしゃい、サスケ」 「いってくる」 一瞬だけ穏やかな表情を浮かべたサスケはその夜、里を発った。
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