数日後── 「は!?一人で行かせたのか!!?」 「えぇそうよ。少し前の夜、わたくしの所に顔を出してから出立したわ」 火影邸の執務室にてサスケが里を発ったことを知らされた綱手は険しい表情でアリスに問うた。穏やかに返ってきた答えに目元を覆って深く息を吐く。 「あ、ついでに大蛇丸も殺してくると言っていたわ」 「っはぁー・・・」 あ、机に突っ伏した。 シズネが心配そうにオロオロしているのを見ながらアリスは小さく苦笑いを零した。 「お前達師弟の思考回路は一体どうなっているんだ・・・」 「基本勝気かしら」 「そうじゃなくてだな・・・!」 楽しそうに笑うアリスに一瞬声を張り上げた綱手だが、何だかもうどうにもならないような気がして再びため息を吐いた。 力があるのは分かっている。アリスもサスケも里屈指の実力者だ。だがもう少し謙遜というものを覚えても良いのではないだろうか。 相手はあのうちはイタチだぞ?一人で討とうなどサスケは何を考えているんだ。そしてそのサスケを引き留めないアリスも何を考えているんだ。 綱手はどうしたものかと頭を捻った。 「大蛇丸の所で良い人材を集めていくみたいだから、木ノ葉からは必要ないみたい」 「だがどの道一人で戦うつもりなんだろう。本当に大丈夫なのか?」 「今までサスケの修業に付き合ってきて、わたくしは大丈夫だと思ったわ」 「・・・シズネ」 「はい」 「第七班を呼べ。サスケの増援に向かわせる」 「え…しかし・・・」 綱手の指示に困惑気味にアリスをチラチラと見るシズネ。アリスがサスケ一人で大丈夫だと言ったのに、それを無視してナルト達を向かわせるのはいかがなものか。 火影である彼女の命令は絶対だが金蘭であるアリスの言葉も無碍には出来ない。 「・・・いいわよ、シズネ嬢。ナルト達を呼んでいらっしゃいな」 「本当に、よろしいのですか」 「えぇ、綱手姫の心配も分かるもの。止める理由はないわ」 気分を害したわけではない様子のアリスにシズネはホッと息を吐いて執務室を出て行く。 綱手は机に肘をついてじっとりとアリスを見ていた。 「あまり勝手をしてもらっては困るぞ」 「どの道サスケはイタチの所に行っていたわ」 「だとしてもだ。一人で行かせることはないだろう。暁はツーマンセルで行動するんだぞ・・・うちはイタチを追えばコンビである干柿鬼鮫とも遭遇する確率が高い」 「その事も含めて大蛇丸の所で必要な人間を集めるのではないかしら」 ゆるりと首を傾げるアリスは逆に何を考えているのか分からない。穏やかに見えてもやはり政客らしい。 のらりくらりと中々核心を突かせないこういうタイプは少し苦手だ。 そんな綱手の心境を知ってか知らずか、アリスは相変わらず表情を崩さないまま言葉を続ける。 「増援を向かわせるなら探索に長けた忍を選出することをお勧めするわ。サスケったらどうしても一対一で決着をつけたいようだから普通に向かっても避けられるでしょうし」 「お前は行かないのか」 「えぇ。少々やらなければならないことがあるしね」 「そうか・・・」 綱手が深刻そうに考え込んだその時、ノックの音が部屋に響く。シズネにしては早いと思いながら入室許可を出せば顔を出したのは自来也だった。 「自来也殿」 「何だお前か。何かあったのか?」 「あぁ、最新の情報だ。・・・大蛇丸が、死んだ」 「まぁ、思ったよりも早かったわね」 里に帰ってきた自来也がもたらした情報にアリスは感嘆の声を零す。綱手が「やったのはサスケか」と聞けば肯定の答えが返ってきた。 感嘆の声を零す綱手とアリス。 「そうか・・・もう大蛇丸と決着をつけたのか。早いな」 「もともと計画の内に入っていたようだから、アジトの大体の位置は把握していたのではないかしら」 「だがあいつはそう簡単に死ぬような奴じゃない」 「転生の時期が近かったはずだわ。本来より随分弱っていたはず」 「そう言えばもうそんな時期だったな・・・。アジトの位置はこの地図に記しておいた。増援を出すんだろう」 地図を受け取った綱手が見るのと一緒に、アリスもそれを覗き込む。割と数がある上に足を運びづらい所に点在していた。地道に一つずつ回るしかないがこれは大変だ。 しかしナルト達を向かわせたところで到着した頃にはもういないのではないだろうか。 せめて誰を連れていくと聞いていないのかと、綱手はアリスに目を向けるが肩を竦めて否定の意を示されて溜め息を吐いたのだった。 [ back ] |