巡り会いてV | ナノ

それからしばらく静かに待っていたところで何やら建物が大きく揺れて下の方の階から轟音が聞こえてきた。警戒した様子のイズモとコテツが小さくアリスを呼ぶ。
一体何が起きているんだと、アリスも眉を顰めて床に目を落としていた。

「随分大きな音ね。雷影様かしら」
「この建物が崩れ落ちないか心配だわ。フー、下の様子はどうなってる?」
「あ…はい──雷と砂の者達は無事です。うちはサスケは・・・何やらチャクラの質が変わりました。かなり強く大きくなり・・・どうやらチャクラが何かを象っているようで集中しています。先程の揺れは恐らくうちはサスケの術の影響かと」

いきなり話を振られたフーが少し戸惑いながらも下の様子を報告する。聞き終えたアリスは礼を言うと考え込むように指を口元に添えて少し俯いた。
自分が記憶する限りこの規模の建物が崩壊するのではと思う程周りを破壊し尽くす術をサスケはそう持ってなかったはずだ。あるとすれば麒麟か口寄せだが今回はそれではない。
とすると、考えられるのは万華鏡写輪眼──須佐能乎か。イタチのを見たところかなり大きかったしフーが感知したというチャクラの変化も説明がつく。
丁度答えが出て落ち着いたところで顔を上げる。と、こちらに目を向けていた土影と視線が合った。何か用かと小さく首を傾げれば土影はいつものふてぶてしい表情のまま口を開く。

「金蘭よ、例え親しい間柄であろうとも抜け忍は始末しなくてはならん。うちはサスケがここに来る前に覚悟を決めておくんじゃな」
「御忠告痛み入るわ──と、思ったけれど、そんな時間はないみたい」
「来た・・・!」

言葉の直後、吊るされていた各国の文字が入った幕が切り落とされる。「上か」と零したフーに全員が見上げれば天井に立つサスケの姿。ダンゾウを確認したサスケは次いでアリスに目をやった──瞬間、ミフネが刀を構えた状態で目の前に現れて薙ぎ払われた刃を剣で防いだ。
その隙に部屋を出て行ったダンゾウを青が追っていく。

「ワシは腰にくる。他の皆で好きにやってくれ」
「それがいいだに」

「この地域じゃわたくしは動けないわ。お任せしましょう」
「アリス様・・・」

床に降り立ったサスケが香燐を呼んでダンゾウを追おうと駆け出す。が、部屋を出る前に後ろからの術に反応して横に跳んだ。ドロリとした液体の酸に行く先の出口を塞がれてサスケは術者である水影を振り返る。

「四代目水影を玩具にし、霧隠れを蹂躙した“暁”・・・。良く見るとやっぱり良い男ね、うちはの一族って・・・」
「邪魔をするな」
「ハァ・・・いい男なのに、もったいないわ」

立ち上がった水影とヒラメカレイを構える長十郎。水影が印を結びながら土影とアリスに避難しておくよう告げた。吹き出した酸が届く前に土影と赤ツチは天井へ、アリス達は護衛が控えていた上へ上がって様子を窺う。

「アリス様、うちはサスケは・・・本当によろしいのですか」
「ただでさえダンゾウが好き勝手やってくれたから。ここでサスケに手を貸す様な真似をすればそれこそ木ノ葉の信用は地に落ちてしまい、今後の木ノ葉の平穏に影響を及ぼしかねない」

冷静に事の成り行きを見守っているアリスを二人が心配そうに見つめる。
本当は庇いたいのだろうか。それとも抜け忍だからと既に切り捨てているのだろうか。
もともと読み取りづらいアリスは室内に残っていた香燐に大丈夫かと話しかけていて何を考えているのかよく分からない。

「あ、あぁ・・・アリスか。ウチは大丈夫だ。それよりこいつ死んだのか?」
「雷影殿がサスケの居場所を聞き出そうとしたのだけれど、答えなかったから首を一捻りしちゃった」
「一捻り!?相変わらず荒い奴だな、雷影は」

あの女も敵なのに割と打ち解けている感じだがいいのか。二人のやり取りを見ていたイズモとコテツは止めるべきか否か迷うように顔を見合わせる。が、アリス曰く「彼女は感知タイプだから然程警戒しなくていい」らしい。
そういう問題かと少し疑問を浮かべた──ところで、アリスが何かに気付いたことに気付いて声を掛ける。しかしその返答が返ってくる前に自分達も異変を察知して目を見張った。

身体に白い何かがついている。

払っても落ちないそれはどんどん成長していく──それも付いている人間のチャクラを吸って、だ。
まず動いたのはアリスだった。不快そうに眉を寄せると体に流れるチャクラを全て魔力に切り替える。糧を失ったそれは容易く剥がれ落ちた。

「なんだこれ・・・!チャクラを吸い取って成長してるのか!?」
「取れないぞ!どうする!」
「二人共、あまり暴れると体まで消してしまってよ」

何やら物騒な言葉が耳に入って二人が動きを止めた。アリスがイズモとコテツについているゼツの分身に触れればサラサラと塵が舞うように形を崩していく。
ようやく全てが取れたその時、廊下側の壁が破壊されて何事かと目を向ければ息の上がったサスケがそこに立っていた。

「手こずってるようじゃぜ・・・。赤ツチ、ワシ等もそろそろ参戦するか?」
「ワイ!」

それぞれが術を駆使して白ゼツを引きはがす。
目を抑えて膝をついていたサスケはふわふわと降りてきた土影を見上げた。

「こんなガキがデイダラをのう・・・。お前に恨みはないが忍の皆が死を望んどる。
 ──じゃあのう」

土影の両手から作り出されたブロックにサスケの身体が呑まれる。かと思ったら、最初から何もなかったかのようにサスケの姿はなくなっていた。香燐の悲鳴のような声が部屋に響く。

「アリス様、あの術は・・・」
「塵遁・原界剥離の術だわ。確か風遁、土遁、火遁の三つの性質を合わせる血継淘汰の一つ。初めて見るけれど敵に回したくない術ね・・・」

純粋に驚いた表情のアリスが感嘆の声を零す。
ここで廊下の方から足跡が聞こえて部屋に戻ってきた雷影達。真っ先にサスケを探す雷影に土影が「ワシが塵にした」と告げれば案の定声を荒げた──が、そこに滑り込んできた低い声に言葉を止めてそちらを振り向く。

サスケを抱え渦を巻いて現れた男は「うちはマダラ」と名乗った。


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