巡り会いてV | ナノ

初めとは別の意味で悪い雰囲気になり話も逸れてきたため、ミフネは話を戻すために咳払いをして注目を集めた。

暁のリーダーは時代の流れを読んでいた。国々の安定、その内に秘める不信感の隙を突き力の拡大を図ってきた。
災い転じて福となす。五影が全員揃う事も滅多にあることではない。

「──どうであろう・・・暁を処理するまでの間、世界初の五大隠れ里、忍連合軍をつくってみては」

その提案にそれぞれが疑問の表情を浮かべる。ただ一人、真っ先に賛成を示したダンゾウは良い流れだと内心嗤った。

「・・・忍連合軍。悪くないのではなくって?わたくしも賛成よ」
「珍しいな、アリス。里本位のお前が賛成するとは」
「七尾まで集めた“暁”に対抗するには木ノ葉単体では犠牲が出過ぎるわ。協力する場合のメリットが協力しない場合のデメリットを上回っただけのこと」

話は連合軍結成の流れになり、ミフネは中立国の立場から連合軍の権限を誰に託すのが適任か提案したいと申し出た。

「──火影に忍連合軍の大権を任せてみてはいかがか?」
「なんだと!?」

ミフネの出した答えに食いつく雷影。自分で良ければと受け入れるダンゾウに眉を吊り上げて反対の意を示した。
ダンゾウは“忍の闇”の代名詞だ。任せられるわけがない。己の里からは暁は一人も出していないのだから、その点の信用を考慮すれば自分が権限を握るのが妥当だろう。
立ち上がって声高に言う雷影だが途中ミフネに遮られて言葉を止める。

強者共をまとめるにはそれなりの情と力が必要なのは分かるが、感情任せに力で行動する雷影は連合軍を先程破壊した机のようにバラバラにするだろう。

風影はこの大権を使うにはまだ若すぎる。他国に顔が利かない。風影の肩書だけではキツイところがある。

土影は逆に歳を召しすぎて機動力に欠けるイメージがある。それに“暁”を利用し過ぎた。信用に一番欠ける。

水影は“暁”発祥の地とされている霧隠れだけにこちらの情報が漏れる心配がある。スパイがいることも懸念される。

金蘭は他国への影響力は大きいが排他的過ぎる。五大隠れ里の忍を率いるのにそれはいただけない。


九尾は木ノ葉のものという事もあり、よって火影が受け持つのが妥当だと、それぞれに目をやって語ったミフネが話を纏めた。
しかしこの流れに納得出来ない者が上に一人──霧隠れの青だ。話を聞いてどこか釈然としない青は隣の長十郎に戦闘の用意をするよう小声で告げると印を組んだ。そして──


「──火影殿、その包帯の下の右目を見せていただこう!」
「どういう事じゃ」
「その右目・・・うちはシスイの目を奪って移植したようですな」

シスイの瞳術は相手の脳内に入り、あたかも己の意志であるかのように疑似体験させ操る術だった。操られていることにすら気づかない、瞳術でも最高クラスだ。

「私の右目もかつての日向と戦った貴重な戦利品・・・貴方と同じで人の事は言えませんが、四代目水影に掛けられた幻術を解いたこの私の目はごまかせませんよ」
「ダンゾウ、貴方そんなことをしていたの」

アリスは感心半分呆れ半分に言って、これでまた木ノ葉の信用が落ちたと片手で顔を覆う。
からくりを聞いて怒りに震える雷影が声を上げた──その時。
突如部屋の中心に緑色の物体が生えてきた。かと思ったら外殻が割れて中の白ゼツが姿を現す。「ハロ〜!」などと冗談交じりの挨拶を投げる白ゼツの登場に会談は無論中止され、上から各影の護衛達が降りてきて身構える。

「イズモ、コテツ、今度は間に合ったわね」
「アリス様、今はふざけている場合ではないでしょう」

小さく笑って言った言葉にコテツが真面目に返せば、アリスは小さく肩を竦めてゼツに目を戻した。

「次から次へとなんだ!?」
「“暁”か?」
「ゼツよ。出身里は不明。いつもは半身に黒いのがいるのに今日は一緒ではないみたいね。戦闘向きではないようだけれど神出鬼没でどこにでも現れるわ」
「久しぶりだね、アリス。あまり情報を流さないでもらいたいんだけどな」

簡単に説明したアリスをゼツが少し困ったように、しかし特別気に留めるでもなくいつも通りの口調で止める。
そして改めて辺りを見渡して告げられた「サスケが侵入している」との情報に雷影が反応を示した。一瞬で机の向こう側のゼツの下へ移動すると首を掴んでサスケの居場所を問いただす。が、はっきりとした答えは返ってこなくて、ゴキ、と嫌な音が部屋に響いた。

「何も殺すことはないでしょう。捕まえて尋問すれば暁の情報が手に入ったかもしれないのに」
「“暁”に口を割るような奴はいない。筋金入りの奴等だ」

「オキスケ、ウラカク、すぐにサスケを探すよう命を出せ。それと第二戦闘態勢を発令だ」
「ハッ!」

「霧の隻眼、お前は火影を見張っていろ!」

それぞれが動き出して、そして雷影が腕を振り上げる。耳につくような破壊音を立てて壁を壊すとシーとダルイについてくるよう言って部屋を飛び出していった。続けて二人も走って行く。

「大事になってしまったわね。サスケったらこんな所に来るなんて・・・マダラにそそのかされたかしら」
「何を悠長なことを言っておる。今回の五影会談襲撃はそもそもサスケの里抜けを許したお前の責任でもあるんじゃぞ」

困ったように首を傾げるアリスを土影が非難する。
イズモとコテツは想定外の襲撃に自分達が役目を果たせられるか心配そうに溜め息を付いていた。
下の方が騒がしくしているのが聞こえる中、ミフネの後ろに控えていた男が青に火影の瞳術が続いていないか問えば術は解いているとの答えが返ってきて少し胸を撫で下ろす。

「火影殿、ここでは忍術は御法度。信用を欠いてしまったな。こんな手を使わずとも拙者は貴方に決めたやも知れぬのに」
「やもしれぬでは困るのだ。ワシは忍の世界を守るためにどんな手でも使うつもりだ」

話し合いでこの忍の世界が一つになることはない。時間を掛けて道徳的にやっていては何も変わらない。
信用があろうとなかろうと結果は必要だと、厳しい表情で語るダンゾウに我愛羅が昔を思い出す。

「それが世界・・・それが人間だとするなら未来はないな。分かち合う事、信じる事・・・それを止めたら世界に残るのは恐怖だけだ。
 道徳を考慮しないやり方や諦めは今の俺にとって受け入れ難いものになった」

生まれてすぐに守鶴を封印されて人柱力になって。実の父親に何度も殺されそうになって信じられるのは自分だけで。
力ずくで物事を動かそうとするその考えが過去の自分を作り出したのだ。
俯きがちに話した我愛羅だがしかし、土影は難しいことを簡単に言ってくれると一蹴した。更に聞きたいことがあれば何でも質問しろと嘲笑交じりに言われて噛み付いたカンクロウをテマリが制する。

「・・・なら一つだけ問う」
「ああ!何でも答えてやるぞ、若造」

「アンタ達はいつ己を捨てた」

思いがけない問いに部屋がシンと静まった。アリスと水影は感心したように口元をゆるめて事の成り行きを見守っている。
テマリが我愛羅を振り返って自分達はどう動くか聞けば少し考えたのち短く「行くぞ」と指示が返ってきた。岩隠れの三人は話し合いから赤ツチと土影がここに残ることになり、木ノ葉と霧は全員行かないらしい。

「アリス様、我々は・・・」
「行かないわ。貴方達が影クラスの戦いに巻き込まれては大変でしょう」
「しかし襲撃者がうちはサスケとなれば木ノ葉の責任問題になります」
「サスケの狙いは恐らくダンゾウ。放っておいてもいずれ上へ上がってくるわ」

特に感情を動かすことなく席についているアリスの言葉に二人が何故狙いが分かるのかと疑問を浮かべる。が、アリスはそれに答えることなくこの先の嫌な展開を予想して小さく息を吐いた。
嗚呼、甘栗甘の善哉が恋しい。


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