巡り会いてV | ナノ

ボロボロになった里の一角で、イズモとコテツ、ゲンマ、それからアリスが復興に使えそうなものを探して歩き回っていた。

「この木ならまだ使えるんじゃないか?」
「そうだな」

何らかの建物に使われていた大きな板を見つけたコテツにイズモは状態を確認して一つ頷く。
これくらいの大きさなら大の男三人いれば作業場まで持っていけるか。
そう呟いたゲンマをアリスが不満げに見るが「貴方に力仕事は無理でしょう」と一蹴される。隣で苦笑いを零していた二人だが不意にコテツが里を見渡して小さく息を吐いた。

「しかし・・・歴代火影たちの築いてきたものが全て破壊されちまったな」
「半分よ、半分。悪かったわね、わたくしの力が及ばなくて」
「い、いえ、そういう意味で言ったわけじゃ・・・!」

慌てた様子で否定するコテツをじっとりと睨むアリスはまだ先日の事を引きずっているらしい。どうせ自分の力不足で、やら、やはりあの男殴っておけばよかった、やら──ブツブツと零していたアリスをゲンマはまぁまぁと宥める。

「アリス様は良くやったよ。それに、火影達の遺産はこの里だけじゃないだろ」
「──その通り」

里を見渡して言ったゲンマにクレーターのある里の中心部から言葉が返ってきて四人はそちらを振り返った。
「まだ俺達が残っている」と、強く言ったヤマトが印を組めば更地だったそこから見る見るうちに木が育ってあっという間に何軒もの家が建つ。
周りの忍達が歓声を上げて木ノ葉の復活は目前だと称賛するが、多量のチャクラを消費したヤマトはげっそりとした表情で膝をついていた。

「ヤ、ヤマト隊長、大丈夫?」
「あぁ、アリス様・・・大丈夫、うん、大丈夫だよ・・・ハハ」

隣まで来て声を掛けたアリスにヤマトは引き攣った笑みを浮かべながら返事を返す。
全然大丈夫そうじゃない。
釣られて乾いた笑いを零したアリス。しかしここでヤマトが「そういえばアリス様」と顔を向けたことで嫌な予感を察して後ずさった。

「貴方も木遁、出来ましたよね」
「え、あー、まぁ・・・いや、でもわたくしに家を建てるまでの技量はないし・・・」
「あるないの問題ではありません、やるんです。出来ますよアリス様なら。ということで手伝ってください」
「何が『ということで』ですか。それよりクレーターのまま家を造るのではなくまずは埋め立てが先ではなくって?」

本来の地面と数メートル程度違うだけならいいがどう見たって十メートル以上は高低差がある。このまま復興を進められないことはないのだが通常の生活に戻った時に外側と中心部の行来が大変になりそうだ。
階段だらけの里など御免だと、アリスは無事だった外側を見上げて小さく息を吐いた。

「えぇっ、じゃあこの家も作り直しですかね・・・」
「いやそれは流石に・・・うーん、埋め立てるのはわたくしがやるわ」
「しかしどうやって」

未だ疲れた様子で座り込んでいるヤマトが疑問を浮かべれば、アリスはその隣に膝をついて地面に手を当てる。集中する彼女に周りが静かになって暫く、足元が揺れて地中の奥深くから地鳴りが響いた。
同時に一帯の地面が迫り上がってゆく。

「アリス様、これは・・・」
「木ノ葉の外から土を集めてみたわ。里が安定したら周辺の地図を描き直さなければならないわね」

地盤沈下が起きて多少地図に変更があるでしょうからと、そう言っている間にも周りとの高低差はほぼ変わらないほどになっていた。
これで里が元通りになった時に余計な上がり下がりをしなくて済む。

「うん、これくらいかしら」
「やっぱりアリスか。これまた大がかりなことをしたねー」
「あ、カカシ先生」

どこからか現れたカカシをアリスが見上げる。ついでに新しい家もよろしくと言われて、呆れ半分に小さく息を吐いた。

「壊れたものを直すならまだ良いけれど、一から何軒もの家を同時に造るなんてコントロールに長けていないわたくしには中々難しくってよ」
「大丈夫、アリスなら出来るよ」
「えぇー・・・」
「ほらほら、里の為でしょ」

断れない理由を出されたアリスが仕方がなさそうに作業を開始する。そして数分後、そこには記憶にある木ノ葉の建物が並んでいた──流石に内装は殆どアリスの想像だが。

────────

「それで、カカシ先生は今からどちらへ?」
「とある方がいらっしゃると聞いてちょっと挨拶にね」
「とある方?」

ヤマト達と分かれてカカシと歩いていたアリスは誰が来たんだと疑問を浮かべたが、ヒントとして「波の国」を出せば意味が分かったらしく表情を明るくさせる。
しばらく歩いていると沢山の木材が見えてきて、それらの間を縫って進めば目的の人物を見つけた。

「もうお着きになっていたんですか」
「久しいわね、お二人共」
「おお、カカシ、嬢ちゃん!木ノ葉の一大事とあってな、超急ぎで来たんじゃ」
「そうでしたか・・・」

気前のいいタズナにカカシはありがた半分申し訳半分に返す。
しかし次の「サスケはどうした」という問いにすぐに答えられず言葉を濁した。一向に言い訳が思いつかないカカシに代わってナルトが前に出る。

「サスケなら今はちょっち喧嘩しちまって里の外へ出掛けちまってんだ。なに、すぐに連れ戻してくっから!帰ったら挨拶してやってくれってばよ」
「なんじゃ、三角関係ならぬ四角関係のもつれってやつか?」
「そんなんじゃねーってばよ!」

笑い飛ばしたナルトにサクラ達がホッとした表情になる。
なんとか気まずい雰囲気にならずに切り抜けて仕事に戻るイナリとタズナ見送った。ところで──

「アリス様」

スッとアリスの傍に一人の忍が現れた。耳元に口を寄せて小さく伝えられた情報に「すぐ行く」と返事を返す。

「──悪いけれどナルト達、わたくしは席を外すわ」

早口にそう言うとアリスはその場を後にした。


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