「・・・へ?アリス!?」 「あら、ナルトじゃない。やはり貴方達の方が早かったわね。わたくしも急いだつもりだったのだけれど・・・」 振り返ったアリスが増援に遣わされたナルト達を見て呟く。 その先にいる、大木の残骸と割れ砕けた地面に横たわる角都を見たカカシとヤマトは漸く事態を把握したようだ。 「つまり、さっき奴が姿を消したのはアリス様が蹴り飛ばしでもしたからってことかな」 「俺の写輪眼でも見切れないって・・・どんなスピードよ。 ──ってアリス!」 急にふらりと崩れ落ちたアリスをナルトが抱き上げてヤマト達の所まで連れて行く。 ぐったりしている様子にいのが慌ててアリスの身体を診始めた。 「ちょっとアリス身体まだ治ってないじゃない!こんなんで出てくるなんてあり得ないわよ!」 「ごめ、なさ・・・ただ、角都に背骨の礼だけ返したくて、ね・・・。 遠目に姿が見えたから・・・トップスピードで、突っ込んでみたのだけれど・・・。写輪眼でも見切れないなら、わたくしのスピードも本物ね」 笑いながら言うも随分と辛そうなアリス。 それにしても早かったと、カカシは角都を振り返った。直線的な動きだからこそ出せたスピードだったとはいえ、写輪眼でも見切れないあれを躱すことが出来る奴は恐らくいない。 ある意味一撃必殺だ。 ただその分身体への負担が大きすぎる。状態を見たところ暫くはまともに立つことも出来ないだろう。 いのがアリスを治療していたところで、後ろの方で角都が立ち上がる気配がした。 「・・・アリス、助かったってばよ。サンキューな。あとは俺がやるからゆっくり休んでてくれ」 「大丈夫なの・・・?」 「任せとけって!新術で決めてやるからよ!」 「あぁ、先程の・・・あれ、飛ばして当ててしまえばいいじゃない」 「かっ、簡単に言うなってばよー!」 ムキー!とアリスに突っ掛るナルト。アリスは疲れた様子で「そう」とだけ呟いた。カカシ達が立ち上がり、角都と向き直る。 「螺旋手裏剣と言っても──あぁ、さっきのナルトの術の事ですが──ゼロ距離で相手にぶつけないとダメなんです。だから影分身で陽動を掛けるのがこの術の基本だったのですが・・・」 「まだ新術の発動持続時間が短すぎるな。もって数秒か・・・」 術が中途半端にしか完成していない上に陽動もバレた。此方に人数がいるならば一人で突っ込むなんて危ない橋を渡る必要はないとカカシが言う。 「カカシ先生・・・修行中に俺に言ったこと覚えてるか? ──四代目火影を超える忍はお前しかいない、って・・・そう信じてるって 確かにチームワークは大事だ。危ない橋ってことも分かってる。でも今俺はその危ない橋を一人で渡りたいんだってばよ。向こうへ辿り着けなきゃ俺はいつまで経ってもガキのままだ。 だから・・・その橋を外す様な事はしないでくれ」 静かに言うナルトに、カカシはヤマトに目を向ける。そして、以前のナルトとは別人だというところををまだ見ていないとの返答に「決まりだな」と呟いた。 「行け、ナルト」 「オッス!」 気合を入れて前に出たことで、角都がまたあのガキかと心の中で呟く。ならば中距離よりも遠距離だ。 再び形態を変えていく角都にナルト達は目を見張った。 「体型を変えただけじゃなく、チャクラもかなり練り込んでる」 「ナルトの術に対応するためだな」 「行動パターンが変わるかもしれないわ。気を付けて、ナルト」 「分かってる。──影分身の術!」 三人の影分身を作り出して螺旋手裏剣を発動させるナルト。それが出来上がると先程と同じように陽動の三人を先頭に走り出した。 同時に角都も走り出して、そしてぶつかり合うと思った矢先、角都が地を蹴って陽動の三人を飛び越す。 「飛んだ!?」 「(後ろの陽動の影分身は無視だ。狙うはオリジナルただ一人。あの術さえ潰せば怖くない)」 驚いた表情で見上げるナルトに一気に迫った地怨虞が、地面を突き刺すように降り注いで多量の土煙を上げた。 晴れた先に串刺しになったナルトの姿。 しかし仕留めたと思ったそれはボワンと煙を撒いて消えた。影分身だ。 直後角都の頭上で螺旋手裏剣特有の高音が響き、それに反応して上を向いた時には既に遅かった。 そして── 「当たりィィ!!!」 見事背にヒットした螺旋手裏剣はナルトの手元を離れて角都を押し飛ばす。 カカシ達の頭上を越えたそれは皆が見ている中、爆発するように弾けた。 轟音と爆風が吹き荒れる様子を愕然の表情で見つめるアリス達。その爆風が砂を巻き込んで此方にまで押し寄せて、皆が一様に腕で顔を覆う。 漸くその爆発が納まった時そこには大きなクレーターが出来ていた。 「(攻撃回数が桁外れだ・・・写輪眼でも見切れない。なんて術だ・・・)」 地怨虞も面も消し飛ばされた角都の体がぐらりと傾いてクレーターの中心に落ちる。 暫く呆然と見ていたアリス達だが、不意にいのが倒れたままのナルトに気が付いた。アリスをヤマトとカカシに預けてチョウジと共に駆け寄る。抱き起したナルトをチョウジが支えて治療を始めた。 「しかしよく三発も作ったね、新術・・・。修行でも二発が限界だったのに」 「まさか此処までのものとは思わなかったわ・・・」 「(失敗してから次を当てるまでの機転の速さ・・・強い自信。 ナルトは本当に強くなってきた。あの四代目でも成し得なかった術をここまで物にするとは・・・)」 そろそろ世代交代の時代だと、ナルトを見ていたカカシが目を細めた。 「・・・カカシ先輩、そろそろ」 「あぁ」 返事を返したカカシに角都を任せてヤマトはアリスを抱えてナルト達に帰るかと声を掛ける。 「カカシ先生は?」 「後始末・・・」 いのの問いにいつもの柔らかい口調で告げて、もう一度帰還を促して走り出した。途中サクラ達とカカシも追いついて合流する。 [ back ] |