巡り会いてV | ナノ

「ねぇアリス、さっきの人って・・・」
「うたたねコハルよ。水戸門ホムラと共に木ノ葉隠れの相談役でその地位は火影とほぼ同等。ヒルゼン様とは同じ師を仰いだ幼馴染であり経験も知識も多いけれど、合理主義なところがあるから綱手姫とはそりが合わないようね」

道を歩きながら問うてきたサクラにアリスは相談役を思い出しながら淡々と述べる。
悪い人でないのは確かだ。里を想い、里のためには何をどうしたら良いのかよく分かっている。ただ里全体を考えるあまり一個人を蔑ろにしがちだから、人情を交えて物事を考える三代目や綱手とは意見が食い違うことが多くなってしまうのだ。

「確かに師匠の顔怖かったかも・・・。でも何の話だったのかしら。雰囲気良くなかったし、何か問題が起きたりとか、」
「恐らくナルトの事ではないかしら」
「ナルト?」

意外な名前が挙がってサクラは目を丸くする。
問題児として有名ではあったがそう重要視することではないのでは。
そう思ったがしかし、ある問題に気付いてハッとした。

「九尾ね」
「えぇ。シズネが此処最近気にしていたようだし、相談役に声を掛けていてもおかしくないと思うわ。あの二人は人柱力を外に出すのを良く思っていなかったから今頃綱手姫と言い争っているのではないかしら」
「そんなに大切な事ならアリスも話し合いに参加するはずじゃないの?ほら、そういう・・・なんていうのかしら。権限?決定権?みたいなのも持ってるんでしょ?」
「確かにこの数年で成り上がったし、本来なら参加しても良いのでしょうけど・・・」
「それにあの人、アリスを招きたくないみたいだった。もしかしたらアリスにも関係のある話なのかも」

口元に指を添えて考え込むサクラ。同行したいと言ったアリスを、承諾するわけでもなく、しかし断って角を立たせるわけでもなく、流すように大した話ではないと返した。
はっきり駄目だと言われるよりも対処がしづらい返事だ。

「サクラの考えは半分当たっているわ」
「半分?」
「綱手に持ちかけた話とやらがナルトの事だと仮定しましょう。そうしたら、わたくしはその話には関係ないわ。でもわたくしを招きたくないという考えは当たり」
「なんで・・・アリスがいたら何か不利になるようなことがあるの」

いつもより真剣なアリスにサクラの声が自然と潜めたようになる。アリスは少し考えるようにしてから再びサクラを見て頷いた。

「不利、というより何だかんだ丸め込まれるから話し合いの場に居させたくなかったのよ」
「丸め込まれるから・・・?」
「えぇ。わたくしが、どちらかというと相談役側の考えをしているせいでね」
「えっ、ならアリスもナルトを外に出すのは反対してるの?・・・でもそれならさっきアリスを追い返す必要なんて、」
「確かに考え方は合理主義で里の為なら手段を択ばない質だけれどね。
 同じ“里の為”でも、相談役は里全体を見渡して物事を判断してる。対するわたくしは里人を主体に、その集合体として里と見てる。だから目指すところや考えは同じでも問題への対処の方法が違うのよ」

小さく指を動かす仕草を加えながら説明していけば、サクラは納得したように相槌を打つ。流石ナルトと違って呑み込みが早い。

「つまり相談役は多少の犠牲を出してでも最小限の時間と労力で効率良く物事を解決するタイプで、アリスは遠回りをしてでも出来る限り犠牲者が出ないようにするタイプ・・・。同じ合理主義でも優先するものが違うってことね。
 でもなんでアリスの意見が通るのよ。話を聞くに結構曲者っていうか・・・頑固そうな人達じゃない」
「ま、同じ合理主義者だからね。その道の事なら考えていることは大体分かるし、解決策も練りやすいわ」
「あぁ、それで・・・」

感慨深いような、はたまた呆れたような表情と声で返すサクラ。
話が一段落ついたところでアリスが「そういえば」と先程の話し合いを思い出しながら呟いた。

「綱手姫が言っていた二人って誰になるのかしらね」
「ナルトが探しに行ったから、あいつが適当に捕まえてきた人じゃない?」
「でも相手が相手だから班のバランスを考えなければならないし・・・九尾の事も放っては置けないわ」
「それもそうね。じゃあ──」

その後も、二人は新しい班員に思いを馳せて一通り盛り上がっていたらしい。

──────────

──木ノ葉病院──

コンコン

「どうぞ」

ノックをしてすぐ返ってきた返事にアリスは目の前のドアを開けた。

「お邪魔します。あら、自来也殿久しいわね。カカシ先生も元気そうで何より」
「おぉアリスか!暫く見ないうちにまた綺麗になったのォ!どうじゃ、この後取材に協力「しません」相変わらずガードの固い奴だ。少しくらいいいじゃないか・・・のォ、カカシ」
「え、あ〜・・・いや、本のモデルがアリスになると、ねぇ・・・」

手元の本とアリスをちらちら見比べながら気まずそうに言うカカシ。アリスは怪訝そうにしながらも本が気になったのかそれを覗き込んだ。

「わたくしに取材を申し込むなんて、一体どのような内容を書いているの?確かその本年齢制限があったわよね」
「お、アリスも読んでみるか?」
「自来也様!」

台に置いてある下巻を手に取って差し出そうとした自来也をカカシが焦って止める。見られると色々とマズイのだ。年齢的にも、内容も、そして何より担当上忍の威厳としても。
冗談だと言って笑う自来也をカカシはジト目で見る。アリスは自分から振っておきながら余り興味がなかったのか小さく肩を竦めただけだった。

そんなやり取りをしていたところ、病室に近付いてくる気配を感じた三人がそちらへ目を向ける。ノックがあってから「入るぞ」と綱手の声が聞こえて、カカシが返事を返せばガラリと戸が開いた。
ドアを開けたシズネと入ってくる綱手、そしてその後ろに続く人を見てカカシは目を丸くする。

「そうか、ヤマトというのはお前か・・・成程」
「はい、今日からカカシ班の隊長代理を務める間はヤマトと名乗らせていただきます」
「ヤマトをここに連れてきたのはカカシ班の隊長を務めるに当たり、ぜひとも知っておいてもらいたいことがあるからだ」
「そしてそれが、カカシの代理に選ばれた最大の理由だ」
「ナルト君の事ですか」

落ち着いた様子で言うヤマトにカカシが一つ頷く。
ナルトに九尾の妖狐が封印されているのを知っているかと確認した後は今回の本題である妖狐の衣の話に移った。
風影奪還の任務で見た妖狐の衣と、その変化の過程を予測して話せば室内は重い雰囲気に支配される。

「──自来也様は一体、何本目まで・・・」
「・・・ワシは今までに二度死にかけたことがある。一度目はあばら六本と両の腕が骨折、内臓破裂が数か所・・・温泉で女風呂を覗こうとして綱手、お前に思いっきりやられた時だ。
 そして、もう一度が──ナルトとの修行中、あいつの九尾チャクラの四本目の尾を見た時だ」

忍服を脱いだ自来也の胸元には抉られたような傷が広がっていて。アリス達は自然と息を呑む。

「・・・派手にやったわね」
「大丈夫ですかね、僕・・・」
「そのためのテンゾウでしょう」
「ヤマトです、アリス様」
「呼びづらいわ」
「・・・」

火影代理時代、木遁の使い手として目を付けてから少しだけ交流があったためか割と仲が良さそうな二人。お蔭でシリアスな雰囲気が少しだけ和らいだ。
微笑みながら言ったアリスの言葉にヤマトはジト目を返す。

「ふふ、そんな顔しないで。ヤマト、ヤマトね。心配せずとも間違えたりしないわ。カカシ班の隊長代理に相応しいと思っているし信頼もしてる。だから、
 ──ナルトを、頼んだわよ

一転して真剣な表情になったアリスが金の双眸でヤマトを見据える。里人の前では我が子を見守る親のように穏やかな彼女が珍しいことだ。
息の詰まる空間にヤマトは改めて背筋を伸ばした。

「ご期待に添えられるよう尽力いたします」
「えぇ。
 そういえば綱手姫は人員を二人用意すると言っていたけれど、もう一人は?」

ヤマトの返事を聞いて一つ頷いたアリスは、思い出したように首を傾げた。綱手を見れば苦い顔をしている。

「あのダンゾウが貸してくれるらしい」
「“根”から?それはそれは、心強いわね」
「心強い?馬鹿言うな。何を企んでいるか分かったもんじゃないよ」
「実力は確かでしょう。まぁわたくしも“根”の存在はあまり好きではないけれどね」
「あら、珍しいじゃないの。アリスが里内の人間を“好きではない”と評価するなんて」

先程に続きアリスらしくない言動にカカシが目を丸くして彼女を見る。正直偽物かと疑ってしまうくらいだ。
そんなカカシの心の内を感じ取ったのかアリスは居心地悪そうに顔を少し歪めた。

「別に“根”に所属する人間そのものが嫌いなわけではないわよ。ただ、組織の方針が気に入らないだけ」

ふい、とそっぽを向いて言った言葉にカカシ達はそれぞれ納得したような表情を浮かべる。確かに己を持たせない“根”の方針はアリスのポリシーに反するだろう。
それでも手を出さないのは組織のメンバーがそれで構わないと言うからだ。作られた人格だろうがなんだろうがそれが本人の意志であり、そして自分も彼等と同じような存在である。相手の気持ち──と言っていいのか分からないが──は十二分に理解できるしそう簡単に変わることが出来ないのも百も承知である。
だがしかし──

「ナルト達と馬が合うと良いのだけれどね・・・」
「アリス様、それについてですが少々残念な報告が」
「・・・言って」
「“根”から配属されたのはサイというアリス様達と同世代の少年です。先程顔合わせをしたのですが・・・まぁ、その、見事なまでに合わなくて」
「・・・そう。やはり“根”の人間とナルト達ではすぐに打ち解けるのは無理だったのね」
「任務に支障が出ないと良いんだがな・・・」

六人は揃って大きなため息を吐いたのだった。


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