巡り会いてV | ナノ

「そういえば前にも同じようなことがあったな」
「わたくしも全く同じことを考えていたわ」

旅館を出て森の中を移動している途中ポツリと呟いたサスケにアリスが同調する。そして「ナルトと違ってよく狙われる奴だ」という言葉に今度は首を振った。

「仕方がないわ。我愛羅には守ってくれる人がいなかったから」
「それはナルトも同じだろう」
「・・・貴方、幼いころ何故ナルトが迫害されていたか知っていた?」
「いや、──そうか、三代目か!」

閃いて言った言葉にコクリと頷くアリス。
そう。ミナトとクシナ亡き後、三代目がナルトを守ってきた。火影であるが故に大ぴらにとはいかなかったがせめて箝口令を敷いて子供達や外部には九尾のことを漏らさないようにしてきたのだ。
それを説明すればサスケは成程、と納得した表情になった。

「それより報告にあった敵のことなのだけど・・・」
「あぁ、爆弾使う奴と赤砂のサソリか。何かわかるか」
「爆弾を使う方はデイダラね。ほら、岩隠れの。誘導式の爆発物を使う遠距離タイプよ。
それとサソリは傀儡と毒ね。傀儡の仕込みもそうだけれど、わたくしとしては毒の方が厄介だと思う。解毒が難しい・・・というより、わたくしの腕では解毒薬は作れないわ」

その情報にサスケが眉を顰める。サクラと比べたら劣ると言えど万能型のアリスは医術にも優れていたはずだ。それでどうにもならないという事はサソリの腕が余程良いとみた。

「大丈夫かあいつら」
「ガイ先生達も向かっているから戦闘になってもすぐに全滅という事はないでしょう・・・恐らく」

難しい顔の二人は一層強く足場を蹴った。

──────────

走って走って、地図の印の場所が見える辺りまで来たアリスとサスケは突如暁のアジトから聞こえてきた破壊音に顔を曇らせた。

「だいぶ荒れているわね」
「らしいな。まずは様子見だ。中の様子が分かるところまで近付くぞ」

表の水辺ではなく裏の平地から近付いて、遂に到着したアジトは天井が崩壊していた。先程の音はこれだったらしい。気付かれないように中を覗けばサクラと一人の老女がサソリと対峙していた。

「どうなっているの。ガイ班がいないじゃない。それにあの方・・・」
「知っているのか」
「えぇ。砂隠れの相談役のチヨというのだけれど・・・まさかこんな所に来ているなんて」

確かあの人は世情に興味がなかったと覚えているが。一体どういう風の吹き回しだ。

「とにかく加勢した方が良いな。医療忍者にS級犯罪者はキツイ」
「でもナルト達がいないわ。ここはサソリ一人みたいだから恐らくデイダラの方にいるはず。方向は──あちらね」

入口の鳥居の辺りが荒れているのを見て呟く。

「・・・サスケ、貴方はデイダラを追って」
「先にこっちを片付けてから向かった方が良くないか。もう一人の方は何処にいるか分からないだろ」
「サソリが毒を使う以上貴方を出すわけにはいかないわ。人数が増えれば負傷率も上がる。傷一つで生死が分かれるこの戦闘ではそれは好ましくないでしょう」

アリスの言葉にサスケが苦い顔になった。その時、砂鉄界法で枝分かれした鋭い針が二人の近くまで迫ってきて、少し後退する。サクラとチヨは無事かと中を覗き込めば何とか直撃は避けていたようだ。

「チッ、サクラの奴怪我してんじゃねぇか」
「サクラ・・・!」

三代目風影が迫るのを見て、アリスが足を一歩踏み出す。が、そこから動く前にサクラが起き上がって目の前まで来た傀儡を殴り付けた。

「あら・・・動けたわね」
「解毒薬か」
「恐らく。流石だわ、サソリの毒を解毒するなんて」
「・・・こっちは大丈夫そうだな。俺はナルトを探す」
「えぇ、気を付けて」

その場から消えるサスケを見送った後、アリスはこれからの戦闘に備えて気合を入れ直した。

──────────

「これで私は、あと三分は毒が効きません」

解毒薬を注射したサクラがチヨの腕を治療しながら言う。
毒を喰らったのに何故動けるんだと険しい顔をしていたサソリは、その様子を見て答えが出たらしく表情を歪めた。

「サクラ、もう左手は大丈夫じゃ」
「はい」

治療を終えたサクラが地に手をついて荒い息を繰り返す。怪力に回避、傷の治療と、チャクラを消費してきたサクラは既に限界が近い状態だった。それでも自分の傷も止血だけはしておこうと印を組み直す。
その時──

「待ちなさいなサクラ」

上からひらりと降りてきたアリスがサクラの手を取った。代わりに印を組んで、驚いた表情のままのサクラを手当てをしていく。

「な、な・・・何でアリスが・・・!?」
「綱手姫から通信が来てね。任務は終わっていたし身体も休めた後だったから応援に来たのよ。サスケはもう一人の方に向かっているわ」
「まさかお前が来るとはのう。心強いものじゃ」
「あら、それは此方の台詞よ。サソリと張り合える知識を持つ相談役がいるなんて心強いわ。でも貴方が重い腰を上げるだなんてどういう風の吹き回しかしら」
「ちょっと昔出て行った孫に会いにな」

ちらりと目を向けて言ったチヨにアリスは「あぁ」と納得したように頷く。そしてサクラの治療を終えると立ち上がってサソリと向き合った。
不機嫌そうな彼と目が合う。

「久しいわねサソリ」
「テメェさっきから上にいただろ」
「あら、気付いていたの」
「気配を消すのが下手だからな」
「・・・貴方が鋭いのよ」

眉を顰めて反論するアリスにサソリが鼻を鳴らした。
そこへグローブをはめたサクラから声がかかる。

「この解毒薬は三分しか効かないわ。残りはチヨバア様に渡した一本だけ。・・・これで決めないと」
「分かったわ。相談役、行けるかしら」
「大丈夫じゃ」

「(ふん、認めてやろう・・・大したガキだ。三代目風影をバラされるとはな。・・・金蘭の小娘まで入ってきやがったし、これ以上他の人傀儡を使っても無駄だな)
 暁に入った時のいざこざ以来だ。いつだったかなァ・・・本当に久方ぶりだ。──自分を使うのはな」

パチンパチンと装束の前を外し、外套を脱ぎ棄てた。その姿にアリスとサクラが息をのむ。

「道理で・・・ビンゴブックの情報と一致しないわけだわ。まさかサソリ自らが傀儡になっていたなんて」
「全身を傀儡にしているという事は、勿論体中全ての武器に・・・」
「毒が仕込んであるじゃろうな」

構える三人と、両腕を突き出すサソリ。

「サクラの解毒薬の効果は残り二分足らず。切れる前に何とか隙を見つけてケリをつけるわよ」
「えぇ」
「分かった」

次の瞬間、サソリの掌から噴き出した火炎放射が三人を襲った。咄嗟に岩陰に身を隠す。サソリが追うのはやはりアリスとチヨで。残りのチャクラ量が少なくマークされなかったサクラが走り出す。
当然そちらに炎が移るため今度はアリスが動くが、すぐに標的になり岩陰に隠れた。
数回繰り返すも距離は中々縮まらない。

「あと、一分半」

チヨが戦闘中に仕込んだ傀儡糸で四代目の頭を使うが失敗。一点集中の水遁で対抗するアリスも性質上有利ではあるがあまりの圧に踏み止まるのがいっぱいだった。

「あと、一分」

火炎放射が止んで、今度は水鉄砲が襲う。熱された岩に当たって水蒸気が上がった。

「サクラ、離れるわよ!」

同じ岩にいたアリスが水蒸気に顔を覆うサクラを引っ張る。直後、岩が飛ぶように割れた。破片が飛んでくるのを払ったり避けたりしていると水圧を上げた水鉄砲がすぐ横を通る。岩を貫通して雲をはらうまでの威力にアリスは顔を引き攣らせて、目眩ましのために煙玉を放つ。

「アリス!そんなことしたらサソリの攻撃が・・・!」
「わたくしは大丈夫だから!サクラも集中しなさい!」

身体を落とした頭の上を水の刃が通ったことにヒヤリとしながらサクラに気を付けるよう促す。クナイを数本放つも簡単にいなされた。
暫くすれば漸く水が切れる。

「いつまで逃げ回っているつもりだ」
「貴方に隙が出来るまでよ」
「っ、」

後ろから迫る雷切に目を見開くサソリ。
そうか、先程の煙玉の。
バリバリと音を立てて撃ち込まれるそれを地面を弾いて避ける。若干二の腕を持って行かれたが落とされるまでには至らなかった。
悔しげに短く息を吐いた分身体は薙ぎ払われた刃に煙を撒いて消える。

「あと、十五秒」

サソリの腹のワイヤーがサクラの横腹を抉り地に刺さる。それを支柱にサソリはチヨに襲い掛かった。

「死ねババア!」
「下がって!」
「アリス・・・!」

チヨの肩を引いて入れ替わるように前へ出たアリスが再び掌に雷を集める。そして回転する五枚刃とアリスの雷切がぶつかるというところで──
グッと、サソリの体が引っ張られて宙を飛んだ。

「しゃぁんなろぉーっ!!」

引き寄せられたサソリの体にサクラが拳を叩きいれればバラバラになり散らばるパーツ達。
動かなくなったサソリに安堵したサクラは、その場に膝をついた。


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