「お見舞い・・・?」 火影とお茶をしていたアリスは、不意に言われた言葉に首をかしげた。 「あぁ。予選の時に負傷した子ども等の数人はお主の同期じゃろう。見舞いに行かんのか?」 「それは・・・行ったほうがよろしいのでしょうか」 「まぁそこは個人の自由じゃが・・・入院した者はお主の顔を見ておらぬ。それも考えると行ったほうが良いのではないか?」 火影の言葉を受けて、アリスは病院へと向かった。 ────────── ──────── ────── コンコン 「どーぞー」 ガラッ 「ご機嫌いかがかしら」 「・・・・・は?」 花を持って病室に入ってきた少女を見て、体を起こしていたキバは目を丸くして固まった。 声をかけても反応しない彼に少女は怪訝そうに眉を顰める。 「聞いているの?」 「だ・・・誰だお前・・・」 「同期の顔を忘れるなんて・・・とうとう記憶までダメになってしまったのね。まぁ元々それほど使うことのなかった頭なのだし、さして問題になるようなことではないでしょうけれど」 どこかで聞いたことのあるような声と毒舌加減にキバはハッとした表情になる。 そして少し震える手で少女を指さした。 「もしかして・・・アリス、か?」 「えぇ。それより指さすのをやめなさい」 そう言いながらベッドに近づくアリスだったが、急にキバは待ったをかけた。 「なんなの?」 「い、いや、ちょっと待て!心の準備が・・・!赤丸!今のオレ変じゃねぇか?寝癖とかついてねぇか??」 「ワンッ」 「よし。いいぜ、アリス」 心なしか緊張したような表情と声だが、アリスは特に気にするでもなくベッドの近くに置いてある椅子に腰を下ろす。 「その・・・意外だな、お前が見舞いに来るなんて」 「ヒルゼン様のお言葉があったから・・・顔合わせがてら、ね」 「顔合わせがメインかよ。しかも火影に言われたから・・・。そうだよな、分かってたぜ・・・お前が自主的に見舞いに来るわけないって。分かってた、分かってたけどよォ・・・ハァ・・・」 軽く落ち込んでしまったキバを見て赤丸が慰めるように小さく鳴く。 そんなキバを横目に、アリスは置いてあった花瓶に花を生けるとそのままドアの方へと足を進めた。 「え、おい!もう帰んのか!?」 「やることはやったもの。これ以上ここにいる理由はないわ。それに他にも回るところがあるから一ヶ所に長居している暇はないの」 そう言ってドアの取っ手に手を掛けるアリスに、キバは「ちょっと待て」と焦ったように声をかけると急いでベッドから降りて靴を履いた。 「お、俺も付いてくっ」 「・・・途中で倒れても放置して帰るわよ」 「大丈夫だって!もう殆ど治ってるし!」 扱いが酷いことに突っ込まないのはもう慣れてしまったからなのか、それともアリスを見て有頂天になっているからか・・・。 ────────── ──────── ────── 暫く廊下を歩き、二人は“日向ヒナタ”と書かれた病室に到着した。 「ん?アイツも入院してたのかよ」 「えぇ。分家と当たってね」 「そっか。ヒナタの奴、頑張ったんだな・・・」 「そうね。あの一件でかなり成長したと思うわよ」 コンコン し〜ん・・・ 「あら・・・?」 「寝てんじゃねぇのか?」 ガラッ 「入るのかよっ」 キバの言葉を無視してアリスは遠慮なしに病室へ足を踏み込んだ。 スヤスヤと寝息を立てているヒナタに近付くとベッドの際に手をついて顔を覗き込む。 「顔色は・・・まぁ悪いわけではないようね」 「悪くねぇってことは良くもねぇってわけか」 「ん・・・」 二人が話しているとヒナタが小さく声を漏らした。
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