「まぁ・・・起こしてしまったかしら」 「ぇ・・・あ、ええっ!?」 ヒナタが驚いて声を上げる。 当たり前だ。起きたら目の前に知らない少女の顔があったのだから。 戸惑って視線を彷徨わせるとアリスの後ろにキバを見つけた。 「キバ君・・・」 「よっ、ヒナタ。具合はどうだ?」 「まだ暫く安静にって言われたよ。それで、あの・・・」 そこで一度口を閉じると、再びアリスに視線を戻して「どちら様ですか・・・?」と不安げに訪ねる。 「わたくしよ、ヒナタ」 「・・・・・アリスちゃん?」 「えぇ。少しずつとはいえ回復に向かっているようで安心したわ」 「なんか俺とヒナタの扱いに天と地くらいの差があるんだけど・・・」 アリスはヒナタに小さく微笑んだ後、いつもの表情に戻ってキバを振り返った。 「持ってきた花を花瓶に生けて」 「オレが?」 「貴方意外に誰がいるというの?」 小首をかしげるアリスに、キバはそっぽを向いて「仕方ねぇな」と言うと準備に取り掛かった。 ヒナタが心配そうに見ている。 「アリスちゃん、キバ君も怪我人なんじゃ・・・」 「大丈夫よ。本人の口から“もう殆ど治ってる”って聞いたもの」 「そ、そっか・・・」 少しでも長く一緒にいたいという気持ちが伝わっていないことに加えて、完治に近いとはいえ怪我人に対するこの扱い。 ヒナタはキバに同情の目を向けたのだった。 ────────── ──────── ────── ヒナタの病室を後にした二人が向かったのはチョウジの病室。 ノックをすると返事が返ってきたため、ドアを開けた。 そこには体を起こしてポテチを頬張るチョウジの姿。 ただし、アリスを見て目を皿のようにして固まっていたが。 「───まさかあのローブの子がアリスだったなんてビックリしたよー」 恒例となった“誰?”という問いにアリスが「とうとう脳みそまでスナック菓子になってしまったのかしら」と哀れみの視線とともに答えたことでチョウジも気付いた。 ほのぼのとした雰囲気のチョウジに、またもやアリスに指示されて花を生けていたキバが呆れたような表情をする。 「お前、怪我はもういいのかよ」 「もともとそんなに酷くないしね。近々退院だよ」 「おっ!俺もだぜ!」 「盛り上がっているところ悪いけれど、わたくしはそろそろ御暇するわ」 「えー、もう行っちゃうの?」 残念そうに眉を下げるチョウジに、アリスは溜め息を吐いた。 「用事は済んだもの。わたくしは修行に行くわ」 「そっか・・・。あ、そうだ!今度一緒に甘栗甘に行かない?」 「さぁ、気が向いたらね」 そう言って出ていくアリスをチョウジが手を振って見送っていると、急に頭に鈍痛が走った。 「いったぁ・・・!」 「お前!何ちゃっかり誘ってんだよ!?」 「だったらキバも誘えばよかったのに・・・」 「ばっ・・・んなことできっかよ!」 結局、ぎゃあぎゃあ騒いでいるところを偶然通りかかった看護師に注意されてその場は収まったのだった。
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