巡り会いてU | ナノ

「・・・どういうことだ」


四日前のこと、綱手に呼ばれてアリスが行方不明になったと聞いた第七班。サスケの地を這うような低い声が室内に響く。


「任務帰りに襲撃されてな・・・。部下を逃すために囮になってそのまま帰ってない」

「申し訳ありません」


その時アリスと共に任務を遂行した暗部三人が第七班に頭を下げる。暫くの沈黙の後、クシャリと前髪を掴んで口を開いたサスケ。


「意味、分かんねぇ・・・大蛇丸の所から帰ってきてゴタゴタも片付いて、やっと余裕が出来たと思ったらまたかよ・・・!しかも暗部だとか聞いてねぇぞ!」

「綱手様、アリス達を襲った相手の見当はついているのですか」

「あぁ・・・暁だ」

「!!」


綱手の言葉にカカシは目を見開き、サクラとサスケは疑問を浮かべる。


「暁?・・・誰なんですか?」

「暁は組織名だ。情報が少なくて詳しいことは分からないがS級犯罪者の集まりと言っていい。アリスを狙ってたってのは知っていたが、まさかこんな形でぶつかるとはな・・・」

「・・・その組織、イタチがいるところじゃねぇだろうな」


“S級犯罪者”“アリスを狙っていた”と聞いて、サスケがハッとしたように鋭い目で綱手を睨んだ。

綱手は言うか言うまいか少し悩んでから小さく溜め息を吐いて口を開く。


「そうだよ・・・。しかもイタチはアリス達を襲った内の一人だ」

「っ、・・・」


ギリ、と歯ぎしりの音が鳴る。きつく握られた手は色を失い、爪の食い込んだ皮膚が痛々しかった。


「あの、ヤロー・・・!」

「落ち着け、サスケ」

「落ち着いてられるか!!ふざけんなよ!」

「サスケ君!呪印が・・・!」


スルスルと肌に伸びる呪印と溢れる邪悪なチャクラ。怒りに制御が利かなくなっているようだ。こんなところで破壊衝動でも出されてしまっては敵わない。


「サスケ、呪印を抑えろ!呑まれるぞ!」

「うるせェ!」

「・・・アリスから、サスケに預かり物がある」


静かに言った言葉だったが確かに届いたらしく、サスケの目が綱手を捉える。彼女の手には薔薇の蕾を模した水晶があった。


「これを、アイツが・・・?」

「あぁ、別れ際に暗部に持たせたらしい」


数秒間それを見つめた後、ゆっくりと手を伸ばす。水晶はサスケの手に収まった途端、淡い光を放ちながら華開いていった。

「サスケ」と、不意にアリスの声が部屋に響く。


「アリス!?」

「どこから・・・」

「その水晶じゃないか?」


綱手の指差す薔薇水晶がサスケの手を離れてフワリと半透明の人形(ヒトガタ)を模る。

その姿は──


「アリス・・・」

「あら、やはり呪印が広がっているわね」


困ったように笑うアリスに、サスケはバツが悪そうに視線を逸らした。落ち着いてきたのかスッと呪印が引いていく。

アリスはそれを確認すると顔を引き締めて周りを見渡し口を開いた。


「時間をかけて造ることが出来なかったからこの状態は長く保てないわ。必要なことを言うから聞いて。

まず囮になってあの場所に残ったことだけれど、わたくしが死ぬことは恐らくないわ。暁は何らか理由でわたくしを必要としているらしいもの。

それで今回の対応として、綱手姫達にはわたくしがいなくなったことが里や里外に漏れるのを防いでほしいの。里が混乱すれば外部から干渉を受けやすくなるから。

隙をついてなるべく早く帰れるように努力するわ。一人や二人なら何とかなると思う」

「大人しく待ってろって言いたいのか?無理に決まってるだろ。アイツのせいでお前は・・・!」


端正な顔が怒りに歪む。アリスは小さく溜め息を吐いた。


「貴方の事だから、イタチの事となれば必ず我を忘れて突っ走ると思っていたわ。前回もそれで痛い目を見たでしょう。

確かに貴方は大分腕を上げたわ。けれど今の状態ではそれを活かし切れない。頭に血が上った貴方の行動は単調過ぎて話にならなくてよ。周りの環境、相手の小さな動き、自分の状態・・・その他諸々、たくさんの情報を見落とす。

だから、里で修行を進めなさい。そうね・・・わたくしが帰ってくるまでに、千鳥から更に形態変化させた術を考案しておいて。この課題が達成出来なかったら破門ね?」


そう言って笑うアリスに今度はサスケが溜め息を吐く。


「・・・あぁ、くそっ!分かったよ!修行は進めとく。だからさっさと帰ってこい!」

「もちろんよ。それじゃ皆、後は任せるわ」


アリスは現れた時同様にフワリと消える。同時にパリンと音を立てて薔薇水晶が砕け散った。


「アリス・・・大丈夫かな」

「アイツのことだ。上手くやるだろう」

「そうそう。それどころかまたあの時みたいにちゃっかり収穫物ぶら下げて帰ってきたりしてね、アハハ」

「「「・・・・・」」」

「冗談に聞こえないあたりが怖いですよね」

「まぁ、アイツだからな・・・」


執務室は、何とも言えない雰囲気に包まれていた。




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