巡り会いてU | ナノ

一方アリスはアジト内の質素な部屋で目を覚ました。


「・・・あぁ、そういえば木ノ葉ではなかったわね」


朝から溜め息を吐いたアリスは時間を確認すると支度をして廊下に出る。

リビング(と呼んで正解なのか未だに悩むが)に向かっていると聞こえてくる言い争いに、何とはなしに引き返したくなった。

しかし朝食は必要なため足を進めて顔を出す。


「騒がしいわ。廊下まで響いていてよ」


声を上げていたのはデイダラと飛段。その相手はイタチだったのだが、彼は適当な返事をするだけでほとんどを聞き流している。

アリスは多数の視線を受けて眉を顰めながら席に着いた。


「まさか昨日に引き続き今日も食事を共にするとは思いませんでしたよ。てっきり部屋に持っていくものだと」

「そこまでする必要性がないわ。それより朝から何を騒いでいたのかしら」

「イタチのせいだ!コイツお前の部屋に結界張りやがったんだよ!」

「お蔭でドアノブにも触れねぇし!うん!」

「あら・・・わたくしに用事でもあったのかしら」

「まぁそりゃ、ナニとかナニとかな」

「何・・・?」

「アリス、ああいうのは相手にしない方が良い」

「んだとコラ!」


色々と言われながらも動じずに食事を進めるイタチ。アリスは毒が盛られていないかさり気なく確認して食べながらその様子を見ていた。煩いことこの上ない。


「文句をつけている途中で悪いけれど、わたくし自身でも部屋に結界を張っていたから、もしイタチの結界がなくても入ることは出来なかったと思うわ」

「そうなのかい?」

「えぇ。寝るときくらい少しでも安全な環境がいいじゃない」


そんなことを話しながら食事をしていると、ザザッと音がして現れるペインの幻身。

「任務を言い渡す」とのペインの言葉に全員の表情が引き締まる。アリスも自然と身を固くした。


「(切り替えが早いというか何というか・・・流石はS級犯罪者といったところかしら。雰囲気が物騒だわ)」

「イタチ、鬼鮫。蓮の国を拠点にしているとある組織を消してこい。何処で知ったか最近暁の情報を集め始めたらしく雨隠れにも数人忍び込んだ」

「・・・あぁ」

「分かりました」

「他のメンバーは任務なしだ」

「あ˝?どういうことだ」


一組しか任務に出さないことを訝しがるサソリ。イタチも小さく眉を顰めていた。このままでは猛獣の檻に兎を放り込んでおくようなものだ。


「今はアリスがいるからな。万が一に備えてなるべく任務に出すのは控えたい。行くにしても近場だ」

「ラッキィ!」

「イタチ残念だったな!蓮の国だと急いでも帰ってこれんのは明日だ、うん!」


ペインは言うことを言い終えると直ぐに消えた。難しい顔をしているイタチにサソリは目を向けて鼻を鳴らす。


「心配しなくても綺麗なまま俺のコレクションに加えといてやるよ」

「この上なく不安なフォローですね」

「鬼鮫、行くぞ」


足早に部屋を出ていこうとするイタチに続き、鬼鮫も返事をして立ち上がった。



「──あぁそうだ」



イタチは不意に立ち止まると飛段とデイダラを振り返る。


「本人の許可を取らずに手を出すと発火するよう仕込んでおいた。馬鹿なことは考えない方が良い」


そう言って颯爽と去っていくイタチに、二人は数秒おいて「はああぁ!?」と抗議の声を上げたのだった。




「──イタチさん、発火の話は本当ですか?」

「いや、ハッタリだ」

「やはりそうでしたか。あの二人は戦闘以外でももう少し頭を使えるようになった方が良いですね」


──────────


「イタチの奴何余計なことしてんだよ!」

「んとだよなぁ。ま、俺は死なないから出来ないことねぇけどよォ」

「・・・関係ありそうだから言わせてもらうけれど、わたくしは火だるまなんてお断りよ・・・」


三者三様の反応。

そんなことはそっちのけで、角都は深く溜め息を吐いた。サソリが聞きとめて視線を移す。


「どうした」

「暫く賞金首を狩るのが難しくなりそうだからな・・・少々生活費を切り詰めた方が良いかと考えていた」

「暁は資金難なの?」


少々哀れみの表情を浮かべたアリスを一瞥して、「いや」と口を開く角都。


「資金難ではないが活動にも色々と費用はかかる」

「そう」


情報漏洩にならない程度の説明にアリスは面白くなさそうに相槌を打った。部屋に帰っていく角都に続いて飛段も祈りを捧げるとか何とか言って戻っていく。


「あーぁ、せっかくイタチがいなくなったのにな・・・。暇だ、うん」

「だったら粘土遊びでもしてろ、ガキ」

「あれは芸術だっての!旦那こそいつまでここにいんだよ」

「俺はそいつに用があるからな」


そう言ってサソリが目を向けたのはアリス。昨日よりは大分収まったものの、それでも微かに感じる殺気に彼女は眉を顰めた。背を向けることは出来ない。


「相変わらず物騒ね・・・。ところで貴方のその姿、傀儡なの?この数日で何度か口元が見えたけれど人間のそれではなかったわ。本体はどこ?」

「よく見てやがるな。確かにこれは傀儡だ。・・・それ以上のことを知りたかったら俺の部屋に来い」

「・・・どう考えても死刑宣告よね」

「だろうな、うん。あそこは旦那のテリトリーだし、色々と危険なモンが散らばってるぜ」

「ふん、テメェみたいなガキじゃあの芸術性は分からねぇよ」

「何言ってんだよ旦那。あんな気味悪い人形、芸術とは言わねェっての、うん!」

「んだとデイダラ˝ァ」


完全に戦闘態勢の二人。今にも飛び掛かりそうな雰囲気でギャーギャーと口論している。




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