「・・・アリス、大丈夫か」 「ぇぇ・・・、っ」 「まだ起き上がるな」 身体を起こそうとして顔を歪めたアリスを制し、イタチは彼女の背中をさする。そして首と袖の捲れた腕に付いている赤い手形に目を落とした。 「(痣になるだろうな・・・) 遅くなってすまない。トビとお前が時間になっても現れないから不審に思っていたが、まさかこんなことになっているとは・・・」 先程の光景を思い出して小さく溜め息を吐く。アリスもつられて眉を寄せた。 「暫く安静にした方が良いだろう。落ち着いたら来い」 アリスが軽く頷いたのを確認したイタチは部屋から出て行った。 「(・・・にしてもトビはどうやって入ってきたのかしら。結界に引っかかればわたくしが気付かないはずない。壊されたわけでもない。不備があったわけでもない)」 目を閉じて思考を巡らせる。 真っ先に時空間移動の考えが浮かんだが、それはテレポートを使用する自分だからであって他人に当てはまる可能性は低い。 実際、アカデミーにて“時空間忍術”という単語は一応出るのだがそれは四代目が有名な使い手だったからであって、特にそこから深く掘り下げることもなければ態々説明されることもない。 四代目の紹介文で1・2回サラッと単語が出てくるだけである。 もともと存在自体を知らない者も少なくない忍術を、況してや習得している人物と偶然この場で居合わせるなんてあり得るのだろうか。 「はぁ・・・」 嫌な夢は見るし首は絞められるし考えは纏まらないしで気分が良くない。特にあの夢は最悪だった。 思い出しただけで腸(ハラワタ)が煮え返る気持ちの矛先は、当然のごとく目が覚めたときベッドに入り込んでいた面の男だ。 時計を見ればいつの間にか30分近く経っている。 アリスは大分楽になった身体を起こすと、首と腕が隠れるドレスに着替えて装束の入った紙袋を手に部屋を後にした。 ────────── 「ペイン、あの伊達巻粘着男の始末許可を貰うわ」 「え、」 「・・・何があった」 現れて早々物騒なことを言うアリスにその場にいたメンバーの視線が集まった。 「色々あったせいで頭が混乱していてね。元凶を抹殺して気持ちの整理をしようと思って」 「・・・おいトビ、お前何やったんだ?」 「サソリさん、僕は無実です。ってかアリスちゃん怖いです目が据わってます」 「大人しく頭を差し出しなさい。焼いて炙って擦り砕いたらデイダラの粘土に混ぜ合わせて華々しくあの世へ送り出して差し上げてよ」 「発想が凄いね」 「怨念ガ篭ッテルナ」 いつもより低い声で言ったアリスの言葉に、白ゼツが苦笑いを零した。小南も頬に手を当ててその様子を見ている。 「余程癇に障ったのね」 「まぁ相手がトビだからな」 「や、小南さんもイタチさんも感心してないで止めてくださいよ!あ、でもアリスちゃん、チャクラ使えないじゃないですか!」 「・・・貴方を消すためなら今ここで魔法を使うのも吝(ヤブサ)かでは無いわ」 「トビ、情報のためです。大変心苦しいですが行(逝)ってもらえますか」 「何処が心苦しいんですか!?むしろ好奇心に満ち溢れていますけど!」 「いいからさっさと逝けよ」 鬼鮫に続き、サソリからも諸に言われてトビは「うわーん!」と声を上げる。 「リーダァー!皆して僕をいじめてきますー!」 「・・・・・・・・・ハァ」 話を振られたペインは、面倒くさそうに重々しく息を吐いたのだった。 [ back ] |