巡り会いてT | ナノ

「さて、みんなもアカデミー卒業試験まであと三ヶ月となった!そこで!先日から予告していた総合試験を行う!」


アリスがコチラに来てから早くも一年以上が経った。

本日行う総合試験は筆記と実技に分かれており、二日間かけて行われる。

出題範囲はアカデミーで習ったことの基礎から応用まで全てだ。

一日目は筆記試験。

出題内容もさることながら範囲が広いため試験時間もかなり長くなり、休憩時間があるとはいえ集中力が必要とされる。

終わる頃には屍がいくつも出来上がると噂の、地獄の試験だ。

二日目の実技試験では取り敢えず教室に待機し、名前が呼ばれた生徒から外に出てさまざまな種目の試験を受ける。

そして後日、試験の総合得点から順位が割り出されてアカデミーの玄関口に張り出されるのだ。

自分のレベルが表沙汰になるため毎年この時期になると必死になって勉強や修行をする生徒が多い。


「それじゃ、始め!」


イルカの合図で一斉に問題を解いていく生徒達。

暫くしてアリスが辺りを見回すと、いつも通り百面相をしているナルトと頭を抱えているキバ&チョウジ、早くも寝ている様子のシカマルが目に入った。


「(いつもと変わらないじゃないの・・・。まぁ、順位とか気にしそうにない四人だものね。でも、確か・・・)」



──試験前日──


総合試験前日というわけで長い説明だけを聞いて解散となった。

帰ろうとしたところでナルトに捕まったアリスは酷く鬱陶しそうにしている。


「とうとう明日だな!アリスはイケそうか?」

「わたくしを誰だと思っているの?貴方は自分の心配をなさい」

「オレだっていつもよりは勉強したってばよ!」

「へぇー。そりゃ、楽しみだな」


そう言いながら話に入ってきたのはキバと赤丸。

シカマルとチョウジもその後ろにいた。


「ったく、総合試験か。めんどくせェな・・・」

「でも順位が発表されるからみんな頑張ってるよね」

「オレなんて母ちゃんからどやされながら勉強やってたぜ。途中で逃げ出したけどな」

「オレも色々言われたな。結局何もしなかったけど」


総合試験というだけあって張り切っているのはどうやら生徒だけではないようだ。どちらかというと親の方が力が入っているところもあるらしい。

不意に、キバが思いついたように「そうだ!」と声を上げた。


「この五人で勝負しねーか?」

「勝負?」

「五人って・・・わたくしも入ってるじゃない」


それぞれが反応する中、キバが身振り手振りをつけて話を続ける。


いろいろと話してくれたが要するに総合得点から出された順位で勝負というシンプルなものだった。

その時点で乗っているのはナルト一人。しかし景品がお菓子だという事を口にすると言うまでもなくチョウジが乗ってきた。

アリスとシカマルは渋っていたが、三人がやる気になれば口をはさむ暇もなく話はどんどん進んでいく。


「じゃあ、勝った奴にはみんなから一個ずつお菓子な!文句なしの恨みっこなしだ!」

「よぉし!やるぞ!目指せお菓子!!」

「負けねーってばよ!」

「「はぁ・・・」」


かなりやる気の三人に対し、二人は溜め息をついたのだった。


────────


「(──ということがあったから、一応はやる気になってるはずなのだけれど・・・一人を除いて)」


そんなことを思い出しながら手を動かす。基本は簡単だ。教科書に載っているものを引っ張り出してきたらいいだけだから。

問題は応用である。捻ってあったり引っ掛けだったり、どれも一筋縄ではいかない問題ばかりだ。

しかしアカデミーレベルであればアリスにとっては朝飯前。というより頭を使う方面にはめっぽう強いため全く問題なかった。



そして試験が一段落して休憩に入ったところで屋上まで風に当たりに来たアリス。

教室では次の教科に向けて少しでもいい点を取ろうと必死に勉強している生徒がたくさんいたが、アリスはそれに混ざらず独りゆったりとした時間を過ごしていた。



再び試験の時間。

周りを見ていると頭を抱える者や溜め息が多い者、貧乏ゆすりをしている者など、苦労している様子がよく分かる。



一日目の筆記試験が全て終わると生徒達は出来具合を報告し合っていた。

それはもちろんこの人達も例外ではなく──


「疲れたってばよー」

「もーダメだ。問題が多すぎる・・・」

「貴方達、相変わらずだったわね」


またもやナルト達に捕まっていたアリスは試験中の様子を思い出して皮肉るように言う。

あんなの出来るわけがないだの習ってないところばかりだのと文句を垂れるがキバとナルトだが、「習ってないではなく聞いてないの間違いだ」と指摘されて明後日の方向を向いた。


「でも、やっぱり難しかったよね。というよりアカデミーで習ったこと全部が範囲だから量が多すぎるよ」

「こんなん出来る奴いるのか?」


ナルトの言葉に五人は辺りを見回す。その中に鮮やかなピンク色の髪の毛を見つけてシカマルが指を差した。


「確かサクラは頭良かったから結構出来てんじゃねぇか?」

「そうだな!さっすがサクラちゃん!」

「後はサスケとかね」


女の子に囲まれている黒髪黒眼を見て今度はチョウジが言う。“サスケ”という名前にナルトが眉尻を上げた。

昔からライバル視しているらしいがよくやるものだ。


「あいつにゃ負けねぇってばよ!!」

「いやムリだろ」

「だな」

「んなこと、分かんねーだろ!なぁ、アリスだって・・・って、あれ?」

「・・・いないねぇ」


みんなが教室を見回して喋っている間に、アリスの姿は綺麗さっぱり消えていた。


──────────
────────
──────


教室を出てからアリスが訪れたのは火影邸の執務室。来るのを予想していたらしい火影は穏やかに微笑んで彼女を迎え入れた。

机を挟んで火影の前まで来ると、アリスはフードと猫面を取る。


「して、試験はどうじゃった?」

「問題ありませんわ。基礎、応用共に上々でございます」


少し気分が上がった様子で報告するアリスは、親に一日の出来事を話す子供のようだ。

キバ達が見たら間違いなく本人か疑うだろう。


「ホッホッホッ!アリスは吸収が早いからのう。結果が楽しみじゃ」

「ヒルゼン様ったら、まだ一日目ですわ。試験は明日もありますのよ?」

「おぉ、そうじゃな。二日目は実技試験か」

「はい。苦手ではないのですが、体術の試験が少々・・・」

「ふむ」

「わたくし、相手の力や勢いを利用した返し技・投げ技ならなんとか出来るのですが・・・忍の体術となると根本的なところから違ってくるもので」


難しい顔のアリスが小さく息をつく。

修行を重ねた結果体が動くようになったため元々得ていた返し技・投げ技はまぁまぁ使えるくらいにはレベルアップしたと思われる。

しかし筋力を必要とする体術となれば話は別だ。力と力が直接ぶつかるのでは、どうしても元々力のないアリスは不利になってしまう。


「落ち着いてやれば大丈夫じゃ。応援しておるぞ」

「ありがとうございます」


それから少ししゃべった後、アリスは火影邸出ていつも通り修行場に向かったのだった。



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