巡り会いてT | ナノ

──二日目──


「アリス!おはよってばよー!」

「よっ!やっと今日が来たぜ!やっぱオレ達は実技で勝負だよな!!」


試験待ちの生徒は教室待機ということで、いつもの四人はアリスのいる机周りに集まっていた。

昨日の筆記試験終了時とは違ってナルトもキバも生き生きとした様子だ。


「どっちにしてもめんどくせぇ・・・」

「お菓子のために昨日は手裏剣の練習したよ」

「オレだって秘密の特訓したんだってばよ!」

「オレも母ちゃんに頼んで体術の稽古つけてもらったぜ!」


シカマルを除いた三人は、どうやらそれなりに頑張ったようだ。


「一日でやろうとしないで日頃から勉強も修行も少しずつ進めたらいいのに。そんなことだからいつも成績が悪いのよ」

「何ィ?アリスこそそんなこと言ってられんのかよ」

「少なくとも貴方達よりは問題ないわ」

「ムッ・・・見てろよ!ぜってー今日の試験で良い点取ってやるってばよ!アリスにも負けねぇかんな!」


その時、ちょうど教室のドアが開いてナルトが呼ばれて意気揚々と手を振りながら教室を出て行った。

続けて三人も呼ばれ、アリスの順番は最後の最後。

彼女が教室を出て行くとき多くの生徒から野次が飛んだのだが、案の定アリスの「貴様等のような三下共に言われる筋合いはなくてよ」という言葉に場内はシンと静まり返った。



──試験会場──


「──よし。じゃあ、最後!手裏剣だ。十回中何回マトに当てられるかで点数をつけるからな。もちろん、中心に近い方が高得点だぞ」


最後の種目は手裏剣だった。

実践ではなく試験という事もあって重視されるのは正確性。如何に教科書通りのフォームで中心に近い位置に当てられるかが点数の付けどころだ。スピードやテクニックは二の次で良い。

一枚ずつ構えて確実に丸太に括り付けてあるマトに当てていくアリス。

十枚全てが終わった時、そこにはマトの中心に手裏剣が刺さった十本の丸太が並んでいた。


「凄いなアリス!全部中心に命中しているじゃないか!この一年とちょっとでよく頑張ったな!」

「マトは動いてなかったわ」

「そう言うな。もっと自分を甘やかして良いんだぞ!最初は50mも走りきれない位だったのに・・・成長したな!」


最初の体力テストを思い出したようで感慨深げな表情のイルカ。

本当に良く頑張った。初めて体力を測定した時は忍になるのは絶望的だと思われたのにいつの間にかいい成績を残せるようになっていて、この調子なら卒業は余裕だろう。

既にそんな気分になっているイルカにアリスは短く息を吐いた。


「大袈裟ね。一年間あったのだしヒルゼン様直々に手ほどきを受けたのだから、成長しない方がおかしいわ」

「アリスは自分に厳しいな。授業にも出てないからどうなることかと思ったりもしたけど本当に良かった。みんなと比べて一緒にいる期間は少なかったがお前も大切な生徒だ。残り三ヶ月もよろしくな!」

「アカデミーを抜け出していたにも関わらず何のお咎めもなしなんて甘いのではなくて?お人好しすぎると損をしてよ・・・イルカ」


そう言って教室に戻っていくアリス。一拍おいて、イルカはハッとなった。


「(アリスが、アリスが・・・!)」


いつも“貴方”としか呼ばれていなかったがようやく『先生』として認識してくれたらしい。

アリスと出会って約一年、諦めずに接してきた甲斐があった。教師であるイルカにとってこれはかなり驚きの出来事であり嬉しい出来事でもある。


しばらく感動に浸った後、イルカは記録用紙を職員室に置いて教室に向かった。



──教室──


「どうだったってばよ!アリス!」


教室に入るなりナルトに話しかけられる。いつもの三人も一緒だ。


「後は順位発表を待つだけだな」とのシカマルの言葉にナルトとキバが自分こそ一位だと騒ぎ立てる。チョウジも控えめに主張をするが反対にアリスとシカマルはあまり興味なさげだ。

主にナルトとキバのやりとりを聞き流していると、しばらくしたところでドアが開いてイルカが入ってきた。


「みんなお疲れさん!これで総合試験は全て終了だ!数日後の授業が終わった後、玄関口に順位表を張り出すから楽しみにしておけよ!それじゃ、解散!」


今度こそナルト達に捕まる前に教室を出るアリス。人気のない場所を探して歩き回っていると森のある演習場を見つけた。


「(ここは静かで良いわね。前の所も気に入っていたけど、今度からこっちも修行の時に利用しようかしら)」


二日間の地獄のような試験を終えたことに肩の力を抜いて、鼻歌を歌いながら木陰で読書を始めたのだった。



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