「あ、アリス!」 アリスがアカデミーの屋上で教科書を読んでいると、サボリ四人+一匹が上がってきた。 授業を抜け出しているときに会うのは初めてだ。アリスは教科書をカバンに閉まった。 「お前もここにいたのかよ」 「ナルト以外、ちゃんと会うのは初めてだね」 「話にはよく出てくるけどな」 「話・・・?」 「うん。ナルトがいつも話してくれるんだ」 「そう・・・。わたくしも、あなた達の事はナルトから聞いているわ。授業は、サボるか寝るか食べ物を食べるかの三択らしいわね」 「おい、ナルト。んな事言ってんのか?」 キバがナルトに問うと、彼は悪戯っぽく笑って本当の事だと言う。しかしナルトこそテストの点数が一桁だとアリスに指摘されて、焦った表情になった。 「な、なんで知ってんだ!?」 「テスト返却の時に声に出ているのを聞いただけ。他の三人も、まぁ残念な点数らしいわね」 アリスは一番後ろの席であるため、試験中の教室の様子が一望出来るのだ。 ナルトは斜め前の方に座っているということで少しだけ表情が見えるのだが、百面相をしていた。 キバとチョウジは頭を抱えるばかりで全く手が動いていない。シカマルにおいては最早寝ているため殆ど書いてないのは明白だ。 アリスが指摘すると四人は顔をしかめる。 「・・・そう言うお前こそどうなんだよ。オレ達より授業出てねーだろ」 「そうだそうだ!ただでさえナルトより下なんだから人の観察なんかしてないでテストやれよ!」 「ふん・・・貴方達に言われる筋合いはなくてよ」 「なんだと!」 「ちょっ!ストップー!」 アリスに掴み掛かろうとするキバをナルトが必死に抑えている。離せ落ち着けと攻防を続けるのを、当事者であるはずのアリスは無関係といった雰囲気で眺めていた。 「キバ、相手は女の子なんだから乱暴しちゃダメだよ!」 「それにあんまり騒いでるとイルカ先生に見つかっちまうぞ」 三人から言われ(特にシカマルの最後の言葉)渋々ながらも落ち着いたキバ。 こんな奴とよくやってられるとナルトに言えば、ナルトは明後日の方向を向いて苦笑いを零した。 「ま、まぁアリスにも良い所は・・・あー、あるんだってばよ。それに酷いときはもっと酷いからなー・・・アハハ」 「何を言っているのよナルト。あれは確実に相手に非があったわ。こちらが謝罪する必要など全くなくってよ」 「「(何があったんだ・・・)」」 「(何があったんだろう・・・)」 遠い目になるナルトに三人の心が一致した。 しかし何となくアリスの機嫌が悪くなってしまったのを察したシカマルがナルトに何とかしろと目をやる。自分が動くのは面倒くさい。 突然指摘されたナルトはアタフタと考えていたが、何か思いついたのか「そうだ」と声を上げた。 「アリスってば授業最初の一回しか出てねーじゃん?テストは毎回受けてるみてぇだけど、そんなんで点数取れんのか?」 「取れているから貴方と違って補習に呼ばれないのではなくて?」 「あ、そっか」 頑張ってひねり出した話題に憐れむような返事を返されて、しかし納得の意を示すナルト。キバが呆れたと言わんばかりの目を向けた。 それでも笑いながらポリポリ頭を掻いているナルトを呆れたように鼻で笑うアリス。 「それよかなんでアリス、顔隠してんだ?シノより見えねーじゃん」 「それ、オレも気になってた!初めて会った時もフード被ってたし、風呂上がった時なんてバスタオル被ってたし・・・」 「ちょっと待て。風呂上がった時って、お前ら一緒に住んでんのか?」 シカマルの言葉に他の二人も反応した。 まさかそういう関係?だの、人は見かけによらないね、だのと囃し立てるキバとチョウジにナルトがワタワタと手を振った。 反対にアリスは一週間ほど世話になっただけで今は別々に住んでいるということを事も無げに説明する。 ついでに言った「あんな部屋にいつまでも住んでいられるわけがないでしょう」という言葉に、ナルトは乾いた笑いを零して肩を落とした。
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