初登校から数日過ぎ、アリスの脱走も板についてきたある日のことだった。 出席日数を稼ぐためと朝の連絡を聞くためにアカデミーの教室へ向かっていたところで── 「ちょっと!何ぶつかってんのよ!!」 「ご、ごめんなさいっ」 「ワザとやったでしょ!」 「見てたんだからね!」 「そんなこと・・・」 教室の入口でアカデミーでも有名ないじめっ子三人と淡い瞳の色のオドオドした女の子が揉めていた。 いじめっ子の内の一人が女の子を突き飛ばすのを見て、面倒なところに来てしまったと息を吐く。 「ほら、ちゃんと謝りなさいよ!」 「早くしなさ「邪魔よ。退きなさい」 なっ、」 突然聞こえたその声に驚いた表情のいじめっ子三人と女の子が振り向く。しかし声の主が分かった途端、いじめっ子三人はニヤリと笑った。 「あーら。サボり魔アリスちゃんじゃない」 「今日もアカデミーを抜け出すの?卒業したいなら授業受けた方が良いんじゃない?」 「まっ、どうせ今さら頑張ってもアンタは留年だろうけどね!」 声を上げて笑う三人に、気の弱そうな女の子は心配そうな顔をアリスに向ける。それらを見てアリスは再度溜め息をついた。 「つくづく煩い連中ね。忍は感情を表に出してはならないと教わったでしょう。忍の基本として学んだというのに忘れてしまったのかしら。もう一年もしないうちに卒業の時期になるけれど、その程度の頭ではこの先苦労するのが目に見えているわ。最初から勉強し直した方が良いのではなくって?」 その言葉に三人が眉をつり上げた。女の子は顔を蒼くして双方にオロオロと目を彷徨わせる。 「調子にのってんじゃないわよ!!」 「授業受ける気ないならアカデミーに来る意味ないじゃない!」 「っていうか、アンタムカつくのよ!落ちこぼれのクセにいつも偉そうにして!二度とそんな口利けないようにしてやるわ!!」 何処の悪役の台詞だと呆れ気味に鼻を鳴らすアリスに、戦闘態勢に入った三人がそろって殴りかかる。 しかしアリスはそれを避けて逆に相手の勢いを利用して足を払った。上手い具合に頭や背を打ち付けられていじめっ子たちが目に涙をためて呻く。 「、いったぁ・・・」 「口の減らない無礼者ね。貴様等はわたくしを落ちこぼれと言うけれど、その落ちこぼれに負ける貴様等は最早忍の才能が皆無ということではなくって?」 「なっ・・・!」 馬鹿にしていただけあってその返しは大きい。三人は顔を真っ赤にして急いで立ち上がると何処かへ走っていってしまった。それを見届けたアリスは鼻を鳴らして教室に入る。 席に着くと少し遅れて先ほど絡まれていた少女がやってきた。
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