あの後、アリスはいつも通り教室を抜け出していた。 行き先は気分次第で今日は火影岩の上だ。教科書の栞がはさんであるページを開く。 「(あんな子、初めて見たわ)」 アリスはヒナタとのやり取りを思い出していた。 今まで自分の周りにあそこまで甘い人はいなかった。あれではこの先苦労するだろうと、そんなことを考えながらいつも通り教科書を読みこんでいたらあっという間に夕方になっていた。 丁度良く教科書一冊を読み終える。 「(・・・当初の予定より少し早いけど、そろそろ体力作りを始めようかしら。ヒルゼン様に相談にいかないと)」 実は最初に会ったとき以来、アリスは火影に懐いていてちょくちょく会いに行っていたのだ。 よって、今回も三代目を頼るらしい。 「(歩いて行くの疲れるのよね。テレポートを使えたら楽なのだけど見られていたら困るし)」 そう、アリスが体力作りを予定より早めようと考えたのは、移動=自分の足というのがきっかけだった。 今までは一度訪れた場所はテレポートで移動していたし、そうでなくても元々動き回らなくても良い地位にあったためにアリスはあまり運動というものをしたことがない。 そのため少し動いただけで疲れてしまうのだ。 だがしかし。現状や忍になる事を考えればその状態はよろしくない。非常によろしくない。 アリスは溜め息を一つ零して火影邸へ向かった。 ──火影邸・執務室── 「ヒルゼン様、アリスにございます」 ノックをして声を上げれば、すぐに入室許可の返事が返ってきた。 ドアを開ければいつも通り穏やかな三代目がお茶を飲んでいる。休憩中か。 「今日はどうしたんじゃ?」 「実はヒルゼン様にご相談が」 アリスが体力作りについての疑問を口にすれば、三代目は顎に手を当ててしばらく思案したのち口を開いた。 どうやらいい案を思いついたらしい。 「ふむ、それならイルカに教わるのが良い。あやつは生徒と向き合うのが上手いからのう。ワシから言っておくから、明日アカデミーが終わったら相談するといい」 その言葉にアリスはイルカを思い出す。アカデミーを抜け出してから初めて見つかったとき怒られそうになった。 しかしアリスが勉強していたのを見て「頑張っているんだな。でも、授業にも出ないといけないぞ」と言って結局は連れ戻されなかったのだ(尤も、言い争いという名のアリスからの一方的な精神攻撃も相俟ってのことだが)。 生徒の努力を認めていて火影からも推される。さらに里の人間から煙たがられているナルトにも他の生徒と同じように接する。 イルカの評価はアリスの中でも低くない。 ということでアリスの体力事情はイルカに託されて、そして次の日が訪れた。 相談した結果、アカデミーが休みの日に簡単な体力測定をやることとその結果に応じたトレーニング方法を教えてもらうことが決まった。 [ back ] |