兎の


「しけたツラしてんな2人とも。カフェインが欲しいならそこの泥水飲みな。」

「ツラはお互い様だよ。泥水ってことはボスはいないのか?せっかく休みの交渉しようと思ったのに」





魔法省3階の奥の奥。

闇払い局本部に新設された”特別癒療班”に入室したジェラルドとマコトは、同僚のフィッツに迎えられた。相変わらず神々しいスキンヘッドの持ち主である彼はこの部署2番目のベテラン、1番はボスのマドックだ。
そして、コーヒーマニアであるボスは不在らしい。
その証拠にフィッツの相棒レミンが淹れる、ひどく個性的なコーヒーがフィッツの手によって私達のコップに素早く注がれた。


「今誰が、僕のコーヒーを泥水って言いました?このミミズを追加してあげましょうか?」


棚の奥からレミンが顔を出した。白衣で分厚いメガネをかけたクルクル頭の彼は不満そうにピンセットでミミズを持ち上げた。どうやら火傷に効く薬を補充しているらしい。

そのままフンと言いながら、調合室に戻る。
レミンはこの部署でマコトと一番年齢が近かった。ダームストラング出身らしく、彼のようなナヨナヨした男がどうやってあの学校を生き抜いたのか、マコトは不思議でならなかった。




ここ”特別癒療班”には5人の癒者が所属している。
主な任務は、他班への癒者兼闇払いとしての同行や潜伏調査。

司令塔となるボス
長期の潜伏を得意とするフィッツと、変身薬や化学に強いレミン
そして短期潜伏や、戦闘現場を担当するジェラルドとマコトで構成される。


潜伏期間に何らかの不調が出た場合に、自身で対応できる癒術や呪いに強い人材は隠密調査に向いている。闇払いの中でも抜群の魔力と運動神経を持つものが入る特殊部隊から派生したこの部署は、マグルでいうMI6というところか。
今は怪我人と病人をこの部署全体でまわし、なおかつ危険な任務には別で派遣される形に。任務の合間にこの部屋で、闇払い達の安全を守る魔法薬も調合する。いわゆる働き方改革というやつだ。


何足のワラジを履くつもりなんだというこの部署を立ち上げたマドックは、現在進行形で潜伏調査をしている。
マコトはひどい味のコーヒーを飲み下してから、フィッツの背中に話しかけた。



「ボスはまだウォータールーに?新しい情報が入ったって聞いたけど… 私たちがいなかった間に何があったのか教えてちょうだい」


ジェラルドも興味津々な様子で、ピクシーの鳴き声のような音を出すボロ椅子に腰掛けた。フィッツは、陽気なおじさんの雰囲気から一変…鋭い眼光で苦虫を噛み潰したよう顔で話し始めた。





「2年も追ってやっとだ。
やっと…証拠品が出たんだよ。これは本格的に俺らのヤマになる」




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