青は藍より出でて藍より青し


転機は突然、何の前触れもなしに来るものだ。









「ん、今日の部隊は?」

「第二。ジェラルド、それ全部食べないでもらえる?私の今日唯一の食事なんだから」


そう言ってマコトはジェラルドの手からベーグルを奪った。
魔法署のロビーを抜け、2人が所属する闇祓い局特別癒療班へと向かっている。

防魔法加工がされたロングコートはドラゴンの革。露出はほとんどなくどちらも擦り切れた医療鞄を手に持っている。
無造作に伸ばした髪を一つ結びにした野性味溢れる男と、アジア系の美しい顔立ちの女が放つ雰囲気は、魔法省を訪ねる一般魔法使いのそれとは大きく違っていた。


「俺にくれたんじゃなかったのかよ」

「ちょっと持っててって言っただけです」

そう言って彼女は歩きながらベーグルをかじった。疲労が染みついた表情、しかし目は強い光を宿している。戦場を生き抜いて来た顔立ち。



「まったく、可愛げある新人はどこへ行ったんやら」


肩を竦めるジェイは古びたエレベーターに乗る。マコトは何を言ってるんだという顔で後に続き、点滅を忘れた階数ボタンを、慣れた手付きで強く押した。





マコト・シノハラ

闇祓い局特別癒療班所属。
魔法署に勤めて、もうすぐ5年が経とうとしている。

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