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『あ……』
「…どうかしたのか?」
エレスは、再び、ジュリアンの肩に手を置く。
『信じられん…』
「なにがだ?」
『何がって…おまえには感じられなかったか?』
「…おまえの話はいつもわからんな…
何の話だ?」
『あぁ…おまえは本当に鈍い男だな。
触れたのだ!!
今、私はおまえの身体の存在を感じる事が出来たのだ。』
「……は?」
エレスは、ジュリアンに近付き、彼の手をそっと握った。
「な、なにすんだ?気色の悪い…!!」
ジュリアンは、エレスのその手を振り払う。
『やはりおまえにも感じられるのか…
不思議だ…
おまえ以外の者には姿さえ見えぬ私が、こうして現実のものに触れることが出来るとは…』
「そういえば…おまえは石の精だったよな。」
『そうだ。
つまり、今おまえが見ている私の姿は現実界でいう実体ではない。
なのに、おまえの実体に触れることが出来る…理屈では説明の出来ないことだな。』
「そういや、そうだな。
しかし、なんで、そんなことが出来るようになったんだ?」
『それは私にもわからん。
ただ…考えられるのは、おまえと私の心が以前にも増して通じ合えて来たということではないだろうか…』
エレスにみつめられたジュリアンは、自分の顔が熱くなるのを感じた。
「ば、ば、ばかっ!変なことを言うな!」
『変なこと?…何かおかしなことを言ったか?』
「な、なんでもねぇ!
俺は、ネイサンの所に行って来るからな!」
慌てて部屋を飛び出すジュリアンの後ろ姿を見ながら、エレスは静かに微笑んだ。
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