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「ん……頭が痛ぇ…」
眩い光を感じて目を覚ましたジュリアンは、同時に刺すような頭痛を感じた。
『なんて酷い顔をしてるんだ。
顔を洗って来たらどうなんだ?』
ジュリアンは、エレスのその言葉に返事もせず、ふらふらと洗面所に歩いて行った。
歩くと、腰や背中が痛むことに気が付いた。
昨夜、ジュリアンは、腰掛けたまま子供のように泣き疲れて眠ってしまっていたのだ。
鏡に映るその顔は、目は腫れあがり赤い鼻をして長い髪の毛はぼさぼさになっていた。
顔を洗い終えたジュリアンは、何も言わずベッドの縁に腰を掛ける。
『なんだ、顔を洗ってもたいして変わらないな。』
いつもならエレスの言葉にすぐに噛みついて来るジュリアンが、今日は一言も言葉を返さない。
『……おまえがそんなに元気がないと調子が狂うぞ。
まぁ、それも仕方のないことだがな。』
「エレス…教えてくれ。
……なんで、俺にあんなものをくれたんだ?
うまく使いこなせなかった俺が悪いってことはわかってるんだが…」
『ジュリアン…考えてみろ。
あの力の使い道は人それぞれだ。
たとえば…そうだな。
富くじや競馬の結果を知ってから時間を遡れば、金を得ることが出来る。
何か大きな出来事を知った後で、預言者として有名になることだって出来るのではないか?』
「俺は金なんかほしくねぇ。
生きていけるだけの金がありゃそれで良いんだ。
それ以上あったって使い道が思いつかないからな。
有名になっても、それが一体何だっていうんだ?」
『……ならば、おまえの好きな石はどうだ?
誰かがとても素晴らしい石を掘り出したと知ったら、どうする?
時間を遡って、掘り出されたその場所に行けば、おまえがその石を手に入れることが出来るのだぞ。』
「俺は、そんな狡いことしてまで石が欲しいとは思わないな。
そんなことをして手に入れたものは、好きにはなれねぇからな。」
エレスはジュリアンの言葉にくすくすと笑っている。
「何がおかしいんだ?」
『いや…あまりにも思った通りの答えだったのでな…
おまえがそういう男だから、私はおまえに掘り出されたのかもしれん。』
「どういうことだ?」
『まぁ、気にするな。
これから、おまえがその力を使うか封じるか、使い方を変えるか否かはおまえ次第だが…
とにかく…元気を出せ。
おまえはこれからも生きていかねばならんのだ。』
「……わかってるさ。」
エレスが、ジュリアンの肩にそっと手を置いた。
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