「おぉ、ポール!
どうしたんだ、こんな遅くに…
おまえは明日からじゃなかったのか?」

ポールの顔見知りの男が、少し驚いたような顔でそう言った。



「いや、地震があったから心配になって来たんだ。」

「あぁ、昼間のあれだな。けっこう揺れたな。
だが、たいしたことはなかったぜ。
そういえば、ネイサンは一緒じゃなかったのか?」

「ネイサン?ネイサンは今日から仕事だっただろ?」

「それが、今日は思いがけず午前中で仕事の下準備が終わって、後は暇だったんだ。
俺達は、宿舎で酒を飲んでたんだが、ネイサンはどこかにでかけてな。
てっきり町に行ったんだと思ったよ。」

「町に?いや、俺があいつの家に行った時は戻っちゃいなかったが…
行き違いになったのかもしれないな。
とにかく良かった。
ジュリアン、無駄足を運ばせてすまなかったな。」

「良いってことよ。
第一、ここへは俺が勝手についてきただけだしな。
しかし、本当に何事もなくて良かったな。」

炭坑は町よりも被害がなかったようだ。
二人は安堵し、その晩ジュリアンは宿舎に泊めてもらう事になった。







次の朝、ジュリアンは町に戻った。

「こんなことなら道具を持ってくれば良かったな。
そしたら、途中の山で早速掘れたのになぁ…ま、今更そんなこと言っても仕方ないけどな。」

『ここへ来てからなかなかうまくいかないようだな。
タイミングが合わないというのか…この土地はおまえと相性が良くないのかもしれない。』

「言われてみりゃあそうだな。
でも、ま、そういう場所でこそ良いものが掘れたりすることもあるからな。
とにかく掘ってみないとわからないさ。
あ、そうだ…!」

町に戻ったジュリアンは、昨夜ポールに教えてもらったネイサンの家をこっそり訪ねてみることにした。
ポールによると、ネイサンの妻・シャーリーはたいそう美人だという噂を聞いたからだ。



「どんな嫁さんかのぞいて行こう!」

『他人の妻が美人かどうかなんて、どうでも良いことではないか。
おまえはおかしなことに関心を持つんだな。』

「良いじゃないか、ちょっと見るだけなんだから…
おまえだって本当は興味あるんじゃないのか?」

『私はそんなものに興味はない!』


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