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「バルザックさん、本当に…
本当に僕の絵はそんな風に思ってもらえるでしょうか?」
「もちろんですとも!
私はこれでもずいぶんと長い間、絵と関わってきました。
ですから、絵を見る目には自信があります。
あなたはいずれきっと人々から愛される画家になられますよ。
安心して私にまかせて下さい!」
「信じられない…どうしよう、ライラ?」
「何言ってるのよ!
バルザックさんがこうおっしゃって下さってるんだから…
頑張ってみなくちゃ!」
「そうか…そうだね…
バルザックさん、ありがとうございます!
これから、どうぞよろしくお願いします!」
アルドーとバルザックは、固い握手を交わした。
*
『今回は信じられない程、良いことづくめだったな。』
「あったりまえだ!
アルドーには元々才能があったんだ。
だからこそだな…」
『才能があっても恵まれない者は山ほどいる。
そして、ほとんどの者が不遇な時期に見切りを付けて夢を諦める…
夢を叶えられるのは、ほんの一部の者だけではないか?』
「そりゃまあそうだけど…
と、とにかく良かったじゃないか!
あの分なら、あの絵にあったような家が建つのもそう遠い未来じゃなさそうだな。
本当に良かったぜ…!」
『……おまえにそんな相手がみつかるのはまだまだ先のようだがな。』
「うっせー!
俺のことは関係ないだろ!」
『まぁ、そうだが…
……あ……!」
「なんだ?どした?」
エレスが、ジュリアンに向かってにっこりと微笑む。
「なんだ?その気色悪い微笑みは…?!」
エレスは、何も答えずただ微笑むだけだった…
「また、なにか嬉しいことがあったんだな!
いいかげん、教えろよ、その嬉しいことってのを!」
しかし、エレスはやはり何も答えずに嬉しそうに微笑む…
「どうせ、そんなことだろうと思ったよ…勝手にしろ!」
そう言ってそっぽを向いたジュリアンだったが、その顔はどこかにこやかなものだった…
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