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使用人の女がいぶかしげな顔でジュリアンをみつめていた。

「お客さん…誰と話してるんですか?」

「誰って…」



(ま、まさか…ひょっとして、おまえの姿は俺にしか見えてないのか?!)

ジュリアンが小声でエレスに囁いた。



『…だからさっきも言ったではないか。
私に話しかけてるとおかしな奴だと思われると…』

「それならもっと早くに言え!!」

「お客さん…」

女は、ジュリアンの言葉に気味の悪いものでも見るような視線を向けた。



「あ…ハハハ…
驚かせてすまなかったな。
じ、実は、俺は売れない役者でな。
たまにこんなことをして、人を驚かせるのが好きなんだ。
ハハハ…」

女はまだ怪訝な顔をしていたが、一応、部屋には通してくれた。



「おまえなぁ…!」

『だから最初に言ったではないか。
おまえとは波長があうから私の姿が見えるのだ…と。
つまりそれは他の者には見えないってことだ。』

「そういう風にわかりやすく言えって!おまえの言い方はいつもわかりにくいんだ!」

『それは、お前に理解力が足りないだけではないのか?』

「くっ…」







ジュリアンは早速その日からサミュエルの監視を始めた。
しかし、そこは一本気なジュリアンのこと。
彼の行動はあまりにもわかりやすく、三日目には不審人物として宿を追い出されてしまった。



それでもジュリアンは諦めなかった。
朝から晩まで宿の外に待機して、サミュエルの行動を物陰からじっと見守った。
そして数日後、今度は警察に通報されてしまったのだった。



「…だから、何度も言ってるでしょう!
俺はサミュエルのことを見てただけなんですってば!」

「それがおかしいというんだ。
なぜそんなことをする必要があるんだ!
大方、誘拐でもしようと企てていたのだろう!」

「違いますって〜〜!」

結局ジュリアンは冷たい監獄の中に一週間ぶちこまれる羽目になってしまった。



(なんでこんなことに…!)



「やい!てめぇのせいなんだからな!
このっ!このっ!」

ジュリアンは、皮袋の上からエレスチャルを何度も叩く。


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