(ない…あのカードがなくなってる……)



夜中にふと目を覚ましたダニエルは、いつの間にか雨のカードがなくなっていることに気が付いた。


(どういうことだろう?
特に僕の周りでは何も起きてはいないのに、あのカードがなくなっているってことは……
何もなければカードがなくなるはずはない。
……まさか、マウリッツの身に何かが…!?)


今一度、ダニエルはカードの絵柄を頭に思い浮かべた。
雨に打たれる数人の人々…その顔はどこか気の晴れない様子で……



(あぁ…わからない…
あれがどうマウリッツと関わるのか…
それとも、マウリッツとは別のことなのか?
だとしたら、カードは僕に一体何を伝えているんだ?)



考えれば考える程、ダニエルの気持ちは混乱の度合いを深めていった。



(……そうだ…!)



ダニエルは、カードを手に取ると、テーブルの上にそれを広げ、気持ちを込めてシャッフルした。


(教えてくれ!
次はどうなる?)


ダニエルの右手が一枚のカードを選び、それを表に返した。
彼の見つめる中で、真っ黒なカードに少しずつ絵柄が浮かび上がって行く…



(これは…!)



そこには、晴れやかな顔をした男女が、グラスを傾けて会食をしている様子が描かれていた。



(それじゃあ……)



ダニエルの心臓はどきどきと嬉しい期待に高鳴った。
その反面、それがこの絵柄の通り、マウリッツの救出を現しているんだろうかと疑う気持ちもあった。
期待と不安の入り混じった心を胸に抱えて、ダニエルは無理矢理に目を閉じた。



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