ルカの赤い箱…お礼企画 | ナノ
魔法使いの沼地15


「いえ…僕は……」

「さぁ、入った、入った!」

「あ……」

リオは男に背中を押され、通りに押し出された。
咄嗟のことで、たまたま向こう側から歩いて来た男と目があってしまったが、不思議なことに男はリオを一瞥しただけでいつもの悲鳴は上げなかった。



(ど…どうなってるんだ!?)

背中を押していた男がリオの前に出て、レストランの扉を開く。
そのいでたちから、男がこの店で働いている事はリオにもすぐにわかった。



「さぁ、入んな。
ちょうど、今はすいてる時間だから良かったな。
なにか食べたいものはあるか?」

男はそう言うと、リオに向かってにっこりと微笑んだ。



(…なぜだ?この人も僕のことを恐れない…
なぜ、この町の人は誰も僕を恐れないんだろう?)

わけがわからないままに、リオは店内に足を踏み入れ、カウンターの隅っこに腰掛けた。
店内には、夫婦らしき二人の男女がいたが、その二人もリオに対して何の反応も示さなかった。



「…どうかしたのか?」

「い…いえ…なんでもないんです。」

「そうか…それで、何を食べたいんだ?」

「え…あの、僕、お金があんまりないんで…」

「そんなこと、気にすんなって言ってるだろ。
じゃあ、適当に作るから待ってろ。」

店主らしきその男は、いかつい顔とは裏腹な人懐っこい微笑を浮かべ、厨房の中で調理に取りかかった。



(今日はなんで皆僕を恐れないんだろう?
……でも、本当に助かった…
これで泥棒にならずにすんだ。
だけど、ただで食べさせてもらって良いのかな…?
少しでも払えたら良いのだけど…)

リオは、どこかにお金が落ちてやしないかとバッグの底をまさぐる。



(あ……!)

リオの指が、固くて丸いものを探り当て、その顔は明るく綻ぶ。
だが、次の瞬間、その表情は暗いものに取って代わった。



(なんだ…ボタンか……
あぁ、これがお金だったらなぁ………えっっ!!)

硬貨と同程度の大きさの手の平のボタンが、一瞬にして硬貨に変わっているのを見て、リオは驚きのあまり硬貨を落としてしまいそうになる。



(ど…どういうことだ!?)

それは、高額のものではないが、ちょっとしたものを買える程度の硬貨だった。
裏を返して見てもどこもおかしな所はない。
リオは小首を傾げ、手の平の硬貨をじっとみつめる。


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