ルカの赤い箱…お礼企画 | ナノ
魔法使いの沼地14






(困ったな…いいかげん、お腹がすいてきたんだけど…)

リオは、さっきから鳴き続けているお腹の虫に疎ましげな視線を向けた。



村を出てからはなるべく人目を避けて山や森の中を歩き、そこで手に入れた木の実等でなんとか飢えをしのいでいたが、若いリオの身体にはそんな程度で足りる筈もなかった。
マリアンが亡くなってから一時はすっかり忘れ果てていた食欲が、いつの間にか元に戻っていることにリオは呆れた。
食べること…それはすなわち生きること…
村人達によって死の恐怖にさらされたことで自分の中にこれほどの生命力が残っていた事を知り、そのことをリオは自分でもとても意外に感じていた。

この数日間にリオが出会ってしまった数人の男女は、やはりいつもと同様の反応を見せた。
このおかしな現象が一時的なものではないということは、リオも薄々感じてはいたが、人と出会う度にやはりどこか期待してしまう…
もしかしたら、この人は、本当の自分の姿を見てくれるのではないか…と。
そして、その度に、リオの淡い期待は悲鳴と共に無残にも打ち砕かれるのだった。



(一生、誰とも関わらずに生きていくことなんて出来るんだろうか?)

人目を避けながら、いつの間にか町に入り込んだリオは、レストランの裏の路地の物陰で、食欲を刺激する良いにおいの誘惑と人知れず闘っていた。



(店が閉まった頃に、どこかから進入して…
だけど、みつかったら大事になるな…
捕まったら、それこそ、殺されるかもしれない…
……でも、何も食べないわけにはいかないし…僕は、どうすりゃ良いんだ!?)

腹の虫は相変わらずぐーぐーと鳴き続け、リオは解決策を思い付かないまま途方に暮れていた。



「……そんな所で何をしてるんだ?」

不意に背後から声をかけられ、リオは心臓が凍り付くほど驚いた。



「あ…あの…僕……」

顔を見られないように後ろは振り向かず、深く俯いたまま、リオは返す言葉を考えて口篭もる。



「さっきから腹の虫がえらく鳴いてるようだが…
もしかして金がないのか?
……腹が減ってるのなら、店に入んな。
困った時はお互い様だ!」

そう言いながら、男の大きな手がリオの肩を叩く。


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