ルカの赤い箱…お礼企画 | ナノ
魔法使いの沼地6






「ど…どうしたんです!?
お、落ちついて!!」

まだ夜が明けたばかりの早い朝、故郷の村の近くの街道で耳をつんざくような悲鳴が上がった。
若い女性は真っ青な顔をしてリオをみつめ、踵を返して村の方へ走り去った。



(…一体、どうしたっていうんだ?
確か、あの人は…)

リオはその顔に見覚えがあった。
確か、隣町の雑貨屋の店員だった女性だ。
特に親しくしゃべったことはないが、こちらが顔を覚えてるくらいだから相手も自分の顔を覚えている筈だとリオは考えたが、悲鳴の意味はどう考えてもわからなかった。

そのうちに故郷の村が間近に迫り、ちょうど知り合いの農夫がこちらに歩いて来るのがリオの目に映った。



「あ…ジョセフさん、おはようござ……」

ごく自然に挨拶をするリオを見たジョセフの顔からはみるみるうちに血の気がひき、道端の石ころをつかんで投げつけると、「悪魔だ!!」…そう叫びながら、村の中へ逃げ帰った。



(……どうしたんだ?
なぜ、僕のことを悪魔だなんて…)

幸いにも石はリオの横をかすめて飛んでいったが、あれがまともに当っていたら確実に怪我をしていた。
ジョセフとはそれほど親しいわけではなかったが、特に恨みを買うような覚えもなかった。
それなのになぜそんなことをされるのか、わけがわからないまま、リオは村の中へ足を踏み入れた。
家に向かうにつれ、出会う人々から恐怖にかられた叫び声が上がる。
逃げ惑う者、腰を抜かして地べたに這いつくばる者、その場にしゃがみこんで泣き出す者…
人口の少ないその村は、普段とはまるで違うものものしい雰囲気に包まれた。
物陰や窓の奥から物が飛びかい、それらを交わすリオへ罵声が飛ぶ。



「誰か!誰か、隣町から神父様を呼んできておくれーーー!」

中年の女性の悲痛な叫び声が飛んだ。


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