ルカの赤い箱…お礼企画 | ナノ
魔法使いの沼地5






(マリアン…僕はこの広い世界でひとりぼっちだ…
おまえがいなくなった今、僕には生きてる意味さえなくなった…
皆に借金を返したら……僕も……
……それまで少しだけ待ってておくれ…)

リオは、夜空の星を見上げながら、心の中でそう呟いた。
村に帰り、心配してくれた人達にマリアンのことを話し、そして働いて借りた金を返すこと…
それだけが、リオの生きる意味であり、心の支えだった。
一生懸命に働けば、きっと一年もしないうちに返せる。
そして、全ての借金を返し終えたら、家族の元へ旅立とう…リオはそう考えていた。



荷車の軽さが、マリアンのいなくなったことを鮮明に感じさせ、リオの表情を曇らせる。
もはや不要となった荷車だが、それも借り物のため捨ててはいけない。

リオはただひたすらに故郷を目指し歩き続けた。
雨の日も風の日も…季節がいつの間にか移り変わっていることさえ気に留める事なく…
ゆっくりと休むこともせず、ひたすらに歩き続けた。



(あ……)

リオが、ふと見上げた空に浮かんでいたのはまるい月…



(そろそろ満月か…そうか…
マリアン…あの日から一ヶ月が経つんだね…
行く時はあれほどかかったのに、帰りはこんなに早く帰れたよ。
明日には家に着く…
マリアン…おまえと一緒に帰りたかった…)

リオの頬を一筋の涙が伝う…


何を見ても、何を聞いても、マリアンとの記憶に繋がり、その度に、リオの胸はかきむしられるような苦痛に痛んだ。
まだ18だったマリアン…
苦労して育ち、ようやく明るい光が見えて来たと想った矢先に病に倒れ、それを救ってやれなかった自分の無力さをリオは大きな罪のように感じていた。



(出来る事なら、僕の命をマリアンにやりたかった…)

毎夜毎夜、リオはマリアンの夢を見た。
時には幸せそうに笑い、時には苦しげにうめくマリアンの姿に、リオの心はかき乱される。
すぐにでも彼女の元へ逝きたいと願うことも多かったが、そんなことをすれば、律儀だった彼女が悲しむ…せめて、やるだけのことをしなくては…それが、今の自分に出来る唯一のことだとリオは考え思い留まった。


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