ルカの赤い箱…お礼企画 | ナノ







(……どうなったんだ?)



さっぱりわけがわからなかった。
もしかしたら、私は死んでしまったのかもしれないとぼんやりと考えながら歩き続けていると、だんだんとあたりが明るくなって来るのに気がついた。

そればかりではない。
風が…今までとは違う優しい風が、私の頬を撫でるのだ。
それが意味すること…それは……



「お……おぉ……」



私は洞窟の外へ出た。
そこには風だけではなく、明るい太陽の日差しがあった。



(これが……地獄……?)



私が暮らしていた世界となんら変わりないのどかな光景が目の前に広がっていた……
しかし、一つだけ違う所があった。

この場所は途方もなく高い壁に囲まれているのだ。
そして、そこには家もなければ人影もない。
あるのは、森のような木々の密集した所と、小さな小川と広い土地が広がるだけ。



この光景は私が考えていた地獄とはほど遠い。
それとも、ここのどこかに魔物でも潜んでいるというのか…?
あたりを警戒しながら、私は小川を目指して歩いた。
急に乾きを感じたからだ。



「あっ!」



小川の側で、私は骨と化した人間の亡骸をみつけた。
ぼろ布となった服の切れ端から見て、おそらく男性だったと思える。
亡骸に損傷はない所から考えると、自然死のようだ。
私は、亡骸に祈りを捧げ、小川の縁に身をかがめた。



もしも、先程の男がこの水を飲んで亡くなったのなら、私もここでおしまいだ。
しかし、それでも構わない。
不思議と迷いはなかった。



私は澄みきった小川の水を手に掬い、喉に流しこんだ。
冷たくて甘いその水は、全身の疲れを癒してくれるようで……
私は夢中になって水を飲み続けた。
怖れていたことは、何事も起きない。








(……どういうことだ?)



時の経過と共にあたりは暗くなり、そしてやがて夜が明ける。
そんなことも私の世界とまるで同じだった。
森には、果物の実る木があり、それで餓えをしのぐことが出来た。
小川には魚もいることがわかった。



これでは地獄というより楽園だ。



何日が過ぎた頃、私はまたあの洞窟を訪れた。
何か見落としたことがあるのではないかと思ったからだ。



「あ…!」

そこで、私は女が倒れているのをみつけた。
全身血だらけで、ほとんど動く事もない。
きっと、私と同じようにしてここに来たのだろうが、もしかして、死んでいるのか…?
私は、女性の生死を確かめるべく、腰をかがめた。




「シェリル……!」

それは、私の愛する人だった。



「シェリル…しっかりするんだ!」

私の声にも身動き一つしなかったが、それでも彼女は死んではいなかった。
微かな鼓動に、私は安堵した。




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