ルカの赤い箱…お礼企画 | ナノ







(……シェリル…)



君は今どうしているだろう?
私が突然いなくなって、君は深く傷付いていることだろうね。
……最低だな。



でも、私にはこうするしかなかったんだ。



(そうだ……)



私には、こうするしかなかったんだ。
他の選択肢はない。
なのに、私は三日もここで躊躇っている。
町を出る時に、すべて吹っ切れたはずだったのに……吹っ切れてはいなかったんだ。
私はここまで君への想いとこの世への執着と、そして、恐怖を引きずって来てしまったようだ。



(しかし、もう迷わない。)



私は立ち上がった。
そして、さほど遠くないあの場所を目指して歩き始めた。

私が行くべき場所へ……
罪人である私が行かなくてはならない場所へ……



(シェリル……)



初夏の日差しのように、若く健康で魅力的な女性……
彼女の弾けるような笑顔が、今もはっきりと私の心に焼き付いている。

その明るさとは裏腹に、本当は繊細な女性だったシェリルが私の所へ懺悔に来たのは、三年程前のことだった。
懺悔する程のことでもない些細なことで、彼女はよく心を悩ませていた。
何度か話を聞くうちに、私は彼女にだんだんとひかれていった。
神に仕えることは、まだ幼い頃から私に決められていた道であり、そのことに疑問や不満を感じたことは一度もなかった。
だからこそ、女性を恋愛の対象として感じたことも一度もなかったし、一生、そうやって生きていけるものだと思っていたが、シェリルとの出会いが私の人生を狂わせた。



私は神に背き、彼女と愛し合うようになった。
しばらくは気付かれずに済んだが、私が罪悪感に悩むようになった頃、それはいとも簡単に周りの人間達の知るところとなった。
彼女の両親は、熱心な信者だったから、その怒りようは尋常なものではなかった。
私はすぐに教会を追放され、町を追い出された。
それは当然のことだ。
ただ、彼女のことが心配だった。
私はシェリルと仲の良かったメイドに、こっそりと彼女の両親への手紙を託けた。



私は風の祠に行きます…と。
彼女には罪はないので、どうか許してやってほしいと。





- 320 -

しおりを挟む
コメントする(0)

[*前] | [次#]

お礼企画トップ 章トップ

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -