ルカの赤い箱…お礼企画 | ナノ
剣の意味・2






「最低だな!
あいつがあんな奴だとは思わなかった!」

「俺は、きっといつかこんな日が来るんじゃないかって思ってた。
それも仕方にのかも知れないけど……」

「仕方ないことなんてないだろ!
俺達だって、みんなそれなりにあいつには協力して来たじゃないか!」



俺にも言いたいことは山ほどあった。
だけど、心の整理がまだ全然着かなくて、ただ、仲間達の言うことを聞いていることしか出来なかった。



ブラッドは、俺達を裏切り、敵国の傭兵となった。
今、我が国と剣を交えているモリダニア王国の傭兵に……

最初は、我が国が圧倒的な優位に立っていたのに、だんだんとモリダニアの方が勢力を盛り返していった。
最近では奇襲をかけてもすべて失敗に終わり、それは、相手国には全てを見通す不思議な能力を持つ軍師がいるせいだと言われている。
こちらの兵士もずいぶんと失われ、国民のことを大切に想われる国王は、降伏することさえ考えられているとも言われるこの大事な時に、相手国の傭兵になるなんて……ブラッドに対して苛立ちを感じるのは当然のことだ。



だけど…あいつにも事情はある。
あいつは、病気のおふくろさんを抱えているんだ。
ブラッドの一家がこの町に来てから、あいつは、ずっと病気のおふくろさんと妹の面倒をみていた。
あいつは本当に献身的で、皆、そういう面ではあいつのことをすごく認めてた。
それに、おふくろさんの治療のために金がかかることだって、皆知ってる。
だから、俺達はみんなそれぞれに出来ることを協力してた…それなのに……!




(そういえば…あれから、もう十年以上が経つんだな……)



ブラッドの一家がこの国に来たのは、俺達がまだ子供の頃だった。
俺の家から程近い小さな空き家に、彼らはひっそりと越して来た。

しばらく経っても、彼らは町の者達と少しも仲良くしようとはしなかった。
ブラッドは、俺達が学校に行ってる間も、帰ってから遊んでる間もずっと働いていて、当然、俺達とは話すこともなかった。

きっかけは、俺の一番下の弟が、ブラッドの妹と知り合ったことだった。
そんなことから、母さんがブラッドの家を訪ね、その時、初めてブラッドのお母さんが病気だってわかったんだ。
うちの母さんはけっこう世話好きだから、それからはなにくれとなくブラッドの家を訪ねるようになった。
ブラッドは、そのことをあまり快く思ってなかったみたいだけど、母さんと話すことで、ブラッドのおふくろさんも少し気が晴れるみたいで……だから、そのうちにブラッドも母さんに感謝して、打ち解けるようにもなったんだ。


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