ルカの赤い箱…お礼企画 | ナノ
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その晩、僕は計画通りに屋敷の中を見て回った。
そういえば、あの男の部屋がどこなのかも僕は知らない。
それどころか、あの男の名前すら知らない。
最初訊ねた時に、男はなんとなく話したく無さそうな返答をしたので、それ以降は用事のある時も、あの…とか、その…とか、言ってしのいでいた。
名前を名乗りたがらないことからして、なにかおかしいと感じるべきだった。



(……だけど、名前なんてどうにでもなるものだから、本当に悪い奴なら偽名を名乗るんじゃないだろうか?
なのに、どうしてあの男は答えなかったんだろう?)



そんなことを考えながら、僕は屋敷の中を見て歩いた。
扉を開ける時は息を潜め、極めて慎重にドアノブを廻した。
どの部屋にも鍵はかかっていなかったけど、どこも永らく使われていなかったようにしんと静まり返り黴臭いにおいがするだけで、おかしなものは何もみつけられなかった。
あの男の部屋もわかった。
廊下をずっと進んだ屋敷の一番奥にある部屋だ。
そして、屋敷の突き当たりのまん中に、裏口にしては妙に大きな扉があった。
扉には鍵がかかっており、開けることは出来ない。
鍵穴からのぞいてみても暗くてなにも見えないし、あたりには窓もないからはっきりとはわからないが、この先は部屋ではなく外に通じているように感じられた。



(そういえば、この屋敷自体、道の突き当たりに建っていた…
と、いうことは、この先にはまた道が続いているということなのか?)



もう少し詳しく調べたかったのだけれど、あの男の部屋がすぐ近くだということもあり、僕は早々にその場を立ち去った。



部屋に戻った僕はベッドの上で、さっきの様子を思い返していた。



(……十分ではないとはいえ、特におかしな気配は感じられなかった。
そうだ…!もしかしたら、あの扉の向こう側になにか小屋のようなものがあるか、あの扉から向こう側に出て…いや、急にあそこから霧が消えることなんて不自然だ。
やっぱり、あの裏に離れのようなものがあるんじゃないだろうか?)

二階の奥にも窓はない。
一階と同様に、裏側がどうなっているのか見えない構造になっている。
僕は急に思い立ち、一番奥の部屋に走った。
鍵はかかってなかったが、思った通り、その部屋には窓はない。



(やっぱり、こっちにはなにか見られてはまずいものがあるんだ…)



僕の鼓動は速度を増した。


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