ルカの赤い箱…お礼企画 | ナノ
昔話1






「も、もしかしてこいつ…」

「……と、鳥人間?」

ピントはずれなアルルの言葉に、カルフは全身の力が抜け、前のめりにずっこける。



「そ、そうじゃないだろ!
翼のある人間っていったら、天使だろう!」

「……これが、天使?」



「て、て、天使様がもう一人ーーー!」



いつの間にやって来たのか、叫び声をあげたクラウドが、涙で潤んだ瞳で白目をむく天使を悲しげにみつめていた。



「カルフ様、こ、こ、この天使様は一体どうされたのです…!?」

「えっと……この者はですね…」

「ねぇ、とりあえず、宿に戻らない!?」

緊迫した状況を完全に無視したアルルが、唐突に提案した。



「宿にったって……」



どうにか、魔物は捕らえることが出来た。
しかし、その魔物は想い描いていた者とは違い、どう見ても天使そのもの…
天使を引き渡すことに、カルフは罪悪感に似たもやもやした想いを感じていた。
とはいえ、天使を引き渡さなければ、宿賃のことでブタ箱に放りこまれてしまう。



(どうすれば良いんだ…)



困惑したカルフは、アルルを呼び寄せ、現状について相談する。




「……ったく、あんたって……本当に使えない男だねぇ…」

「だ、誰のせいでこんなことになったと思ってるんだ!
そんなことより、時間がないぞ。
なぁ、どうする?
やっぱり、あいつを引き渡すしかないかな?」

「あいつを引き渡すったって……そんなこと、あのクラウドが許すとは思えないけど…」

クラウドは、天使にとりすがり、ぽろぽろと大粒の涙を流しながら祈りの言葉を捧げていた。



「でも、それじゃあ…」

「……仕方ない。
トンズラするわよ。」

「……トンズラ?」

「そうよ。今なら逃げられる。
ちょうどうまい具合に食料もあることだし、今のうちにどこか遠くまで逃げるのよ。」

「ば、ば、馬鹿なことを言うな!
宿賃を踏み倒すなんて、そんな恥ずかしい真似が出来るか!
第一、僕の服は宿屋に……」

「さ、行くよ!
クラウド、行くよー!」

「え……ま、待って……」

アルルは、カルフの言葉に耳を貸すことなく、彼の手を引いて走り出した。
天使を背負ったクラウドがその後ろを着いて行く。


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