ルカの赤い箱…お礼企画 | ナノ



(……すぐには無理かもしれないけど……
でも、僕はあらためて気付く事が出来た。
エレーナ…この世で君を失ったのは事実だけど、僕達の関係は何一つ変わってないってことがよくわかったよ…これもあの老人のおかげだね……
……まさか、あの老人は!)

アーロンの心が俄かに熱くなった時、アーロンは周りの景色が変わっていることに気が付いた。



「こ、ここは灯台の入口じゃないか!」

あれだけ時間をかけて辿り着いたあの場所から、ほんの数分で下に戻っていたことに、アーロンは酷く動揺した。
しかし、よく考えてみれば、そもそもあんなに時間がかかったことの方がおかしいのだということもわかっていた。
むしろ、このくらいで下に戻ることの方が正常なことなのだと。

アーロンは、今一度灯搭に続く扉を見上げ、今下りて来たばかりの階段を再び駆け上がった。



そこへは少し息が切れただけの時間で着いた。
それほど急がなければ、息が切れることさえなかった筈だ。
アーロンは、扉の前で一瞬の躊躇いを見せたが、すぐにそれもおさまり、恐る恐るその取っ手を掴んで引き開けた。



開け放たれた部屋の中に人の姿は見えず、しんと静まり返り、揺り椅子だけがわずかに揺れるだけだった。



(……やはり……そうだったのか……)



アーロンは、外へ続く扉を押し開けた。
少し湿った海風が、アーロンの火照った頬を優しく撫ぜる。



(綺麗な夕陽だね……)

アーロンは、目の前に広がる一面のオレンジ色に目を細める。



(エレーナ、覚えてる?
僕が、夕陽を見たら寂しい気持ちになるって言ったら、君は笑ったよね。
明日になればまた出て来てくれるのにって。
……どんなに悲しいことがあったって、苦しいことがあったって、沈んだままじゃないんだよね…
エレーナ…僕は弱虫だから、これからもまた何度もくじけそうになるかもしれない…
だから、どうか僕の傍にいておくれ。
僕も頑張るよ…僕の中の灯りを消さないように…もっと明るいものに出来るようにね…)

沈みゆく夕陽を名残惜しげに見送りながら、アーロンは背を向け、ゆっくりと歩き出した。



〜Fin


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