ルカの赤い箱…お礼企画 | ナノ



「エレーナ!
……い、今、僕の身体が……!」

老人は、穏やかに微笑みゆっくりと頷く。



「い、今、急に僕のまわりが温かくなって……」

「おまえさんが深く信じれば、今みたいに何かを感じられる筈じゃ。
たとえ、周りが誰一人として信じてくれなくとも、気のせいだろうとそんなことはどうでも良いことじゃ。
おまえさんが、エレーナの存在を信じられること…それが一番大切なこと。
彼女が傍にいてくれると思えば、もう寂しい事など何もなかろう?
どこへ行くにも、何をする時も…おまえさんには彼女が傍についていてくれるんじゃからな。」

「ご老人…あなたは一体……」

アーロンの問いかけには答えず、老人は話を続ける。



「おまえさんは、さっき、自分が真っ暗な洞穴の中にいるようだと言うたな。
灯りが見えず動くことが出来んと…
そしてここに来ることだけが小さな灯りに思えたと…」

アーロンは、ただ黙って頷いた。



「もしも、ここから海に見を投げれば…おまえさんはその洞穴から出ることが出来ると思うか?
明るい陽の下へ出られると…」

アーロンは力なく首を振る。



「その通りじゃ。
そんなまやかしの灯りに誘われても、暗いところから抜け出す事は出来んのじゃ。
行きつく先は今と同じ…いや、それ以上の闇の中なのじゃ。
アーロン……そんな時には自分が灯りになれば良い。
自らが明るい灯を灯せば、周りのことがわかるようになる。
そうすれば、歩くのが怖くなくなるじゃろう?
おまえさんは自由に歩くことが出来るんじゃ。
すぐには出口がみつからなかったとしても、おまえさんはいつでも好きな時に好きな方向へ歩いて出口を探すことが出来るんじゃ。」

「自らが灯りに……」

「すでに、おまえさんの心の中には灯が灯ったようじゃな…
もう心配はあるまい…」

「ご老人……僕……」

「さ、おまえさんがここにいる理由はなくなった。
さっさと出て行っておくれ。
わしは、これから夕陽を見ながら一人でゆっくりしたいんじゃ。」

そう言うと、老人は有無を言わさずアーロンの腕を掴んで立たせ、無理にその背中を扉の外へ押し出した。
アーロンはなすすべもなく、そのまま階段を降りて行く…
様々な想いがアーロンの胸の中で渦巻き、激しく混乱はしていたが、それでもどこか清清しい気分を感じていた。


- 227 -

しおりを挟む
コメントする(0)

[*前] | [次#]

お礼企画トップ 章トップ

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -