「では、このお部屋をお使いください。」

俺達は、けっこう大きな部屋を与えられた。
部屋には、もう布団も敷いてあったし、寝間着らしきものも用意してあった。



「なぁ、美戎…さっきのことだけど…」

「さっきの何?」

「なにって…ほら、帰りの方法がわからないとかなんとかって奴…
もしかして、何か理由があって、煎兵衛さんの手前ああいっただけなんじゃないのか?」

「え?どんな理由があるっていうの?
あれはそのまんま、本当のことだよ。」

美戎は寝間着に着替えながら、そう答えた。



「ほ、本当って……そ、それじゃあ、帰る方法がわからないっていうのは本当に本当のことなのか!?」

「そうだよ。」

ふざけた様子も、わるびれた様子も一切なく、美戎は事もなげにそう言った。



「お、お、お、おまえなぁ…!
自分が何言ってるかわかってんのか!?
帰る方法がわからないってことは、俺達は元の時代に戻れないってことなんだぞ!!」

「そんなことわかってるよ。
でも、仕方ないじゃない。
あの時は、まさか本当に時をさかのぼれるなんて思ってなかったんだもん。」

「し、し、仕方ないだとぉ…!?」

なんだか無性に苛々した。
こいつ、なんでこんなに落ち着いてるんだ?
元の時代に戻れないかもしれないっていうのに、なんで……



(あ……)



そうか……
美戎は、愛する早百合さんが亡くなってしまったから…
だから、あの時代には帰りたくないって思ってるのかもしれない。
逆にいうと、やけくそだな。
帰れなくても別にいいや…みたいな…



でも、それは美戎の問題だ!
俺には新婚のゆかりさんがいるんだ!
俺は、あの時代に帰りたい!
なんとしても帰りたい!!



とはいっても、俺には何も出来ない。
呪文のことなんてまったくわからないし、こんな俺には、奇蹟さえ起こせないだろう。



だったら、どうすれば良いんだ!?
元の世界に戻るには一体何をすれば良い…!?



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