「おまえ…ものすごい食欲だな…」

「そう?」

煎兵衛さんは、美戎の食いっぷりに目を丸くしていたけれど…煎兵衛さんだって美戎と変わらない程食べている。
やっぱり、安倍川家は大食いの血筋なんだな。



煎兵衛さんは、俺達のことを遠縁の者だと弟子さん達に紹介してくれた。
おかげで、屋敷の中だって自由に歩けるし、お弟子さん達も俺達には親切にしてくれる。



「もうしばらくはここにいるのだろう?
私もまだまだ聞きたいことがあるからな。」

「うん、しばらくっていうか…当分いると思うよ。
僕、帰りの呪文を知らないから。」



(……え?)



美戎の奴…今、なんだか恐ろしいことをさらっと言わなかったか!?



「えっと…あの…美戎…
何を知らないんだって?」

「だ〜か〜ら〜…元の時代に変える方法だよ。」

「またまたぁ……
ここには煎兵衛さんもいるんだし、第一、ここに来れたってことは帰ることだって本当は出来るんだろ?」

美戎と煎兵衛さんは、まるで申し合わせたかのようなタイミングで首を振る。



「行きと帰りの方法は必ずしも似たものじゃないんだよ。
ね?煎兵衛さん?」

「そうだ。
それに、私は昔から時を超える術を研究して居るが、いまだ、成功はおろか、成功の見込みさえつかめてはおらん。」

「そ、そうなんですか…はは…はは…はははは……」

あまりに不安が大きすぎて、俺は誤作動を起こしてた。
笑うところじゃないってことはわかるんだけど、勝手に顔がひきつりながら笑ってて、元に戻らなくなってたんだ。



どうすんだ!?
元の時代に帰れなかったら…



やっとゆかりさんと結婚出来たっていうのに、甘い新婚生活はほんの数か月で終わるのか!?



い、いやだ…!
そんなの、いやだーーーーー!





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