「来週は、みんなで少し遠出をしましょうよ!」

レヴの母・ヴァレリーが嬉しそうな笑顔でそう提案した。



「どこへです?別荘へでも行くのですか?」

「違うの。フレデリックとローラの新居よ。」

「奥様!!」

カトリーヌが慌てた様子で声を上げた。



「どうした?カトリーヌ…」

「…い、いえ…その…」

「おばさん、フレデリックとローラって誰?」

サリーの質問に、カトリーヌの顔は大きくひきつり、それからすぐに俯いて黙り込む。



「フレデリックはレヴの従兄弟なの。
年はレヴより下なんだけどね、とてもしっかりしてて小さい頃からよくレヴの面倒をみてくれてたわ。
今はお医者様になっているのよ。
それから、ローラはね、レヴの…
あら?レヴにはまだこの話はしてなかったかしら?」

「何の話です?」

「ローラは先月、フレデリックと結婚したのよ。」

「フレデリックと?
…そうですか…それは良かった…
彼なら、ローラのことをきっと幸せにしてくれるでしょう。」

「ねぇねぇ、ローラって誰なのさ。」

「ローラはね、レヴの婚約者だった人よ。」

「こ、婚約者?!」

サリーは、口にふくんだワインを吹き出した。
ヴェールやジネットも思わず食事の手が止まる。



「レ、レヴの婚約者がレヴの従兄弟と結婚したっていうのかい!?」

「だって、この子ったら、いきなりふらっと出ていって、こんなに長い間帰って来なかったんですもの。」

ヴァレリーは事も無げにそう言った。



「レヴは大丈夫なのかい?」

「あぁ、フレデリックは信頼できる男だ。
彼なら心配ないだろう。」

「……だ、だって、ローラって人はあんたの婚約者なんだろ?
その人のこと、好きじゃなかったのかい?」

「もちろん好きだぞ。
いずれ私が結婚するなら、相手は彼女とだと思ってはいた。
しかし、婚約者とはいっても、どちらかといえば周りが昔からそう思い込んでたようなものだからな。
特別な誓いをしていたわけではないのだ。」

「えぇ、そうね。
ローラのご両親は昔からあなたのことをとても気に入ってらっしゃったから。」

「でも……」

サリーは、心配そうな顔でレヴをじっとみつめる。



「フレデリックは本当にすばらしい男なのだ。
君も彼に会えば、そのことがよくわかると思うぞ。」


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