「その通りですよ。
それに、あなたがそんなことをおっしゃったら、それならあの子があなたについていきたいと言ったのを許した私が悪いということにもなりますわ。
……誰が悪かったというものではなく…きっと決まっていたことなのでしょう…
ですから、ヴェール様もご自分を責めるのはやめて下さい。
私達のちっぽけな力では、運命を変えることなんて出来ないのです。
私にとっても辛い運命でしたが…赤ちゃんを遺してくれたことが、大きな救いです。
そうでなければ、私はひとりぼっちになってしまう所でしたもの…
ヴェール様、あなたのおかげですよ。
本当にありがとう…」

「ディサさん…」

「そんな話よりも、あの子に名前をつけてやって下さいませんか?」

「そうだよ、ヴェール。
早く名前をつけてくれないと、呼びにくくて困るよ。」

「…カタリナも、赤ちゃんの名前はあなたにお願いするつもりだったようです。」

「なぜ、そのようなことを?」

ディサは立ち上がり、一冊のノートを持ってきた。



「ここに、絆の家に着いてからのことが書いてあります。
あなたと赤ちゃんに対するひとり言のようなものです。
絆の家に着いてから書き始めたんでしょうね…」

「そんなものがあったのですか…!」

「そこには魔石のことは書いてなかったのですか?」

「ええ、それについてはまるで…
ヴェールさん…ぜひあの子の幸せだった日々の想いを読んでやって下さい。」

「…実は、私は森の民の文字が読めないのです。」

「そうでしたか…!
では、近いうちにお教えてしましょう。
そうだわ、明日からでも…」

「ディサさん、その前に私は行かねばならない所があるのです。」

「えっ!どこにですか?」

「リーズさんの所です。」

その言葉に、レヴは驚いたような顔を浮かべた。



「リーズの…?
それなら大丈夫だ。
リーズの所へは、私とサリーとで行く。
君がもう少し元気になったらそうしようと考えていたのだ。」

「いえ…
自分の目で確かめたいのです。
それを済まさない限りは、ここに落ち着くことが出来ません。
何日もお待たせしてしまって申し訳ありませんでした。
明日、発ちましょう。
ディサさん、申し訳ありませんが息子のことをあとしばらくよろしくお願いします。」

「…わかりました。どうぞお気を付けて…!」


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