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いずれは森の長の跡継ぎとなる大切な子供の誕生…そして、その母親は亡くなった…
西の森は、大きな喜びと悲しみを同時に感じた。
あれから数日後、ジネットの葬儀がしめやかに執り行われた。
深い悲しみに包まれながら、ジネットは、イルヤナやオルガの木の近くに葬られた。
赤ん坊は数ヵ月前に子供を産んだ女性に乳を分けてもらい、すくすくと元気に育っている。
ヴェールの落ち込みようは激しく、葬儀の後もほとんど一人っきりで部屋に閉じ籠っていた。
それも仕方のないこと、今はそっとしておこう…
身体のことも気にはなったが、今は自分自身で乗り越えるしかない時期なのだろう…
そう思い、レヴ達はヴェールを自由にしておいた。
ようやくヴェールが部屋から出てきたのは、ジネットの死から十日程が経った頃だった。
「ヴェール…大丈夫なのか?」
「はい。ご心配をおかけしました。」
「……サリーさんは?」
「ディサさんの家だ。
毎日、君の子供の世話をするのが楽しくて仕方がないようだ。」
「そうですか…自分でも本当にふがいないと思うのですが…
この何日間かはジネットさんのことで頭がいっぱいで…子供のことを考えるゆとりもありませんでした。
……こんな私に父親の資格はありませんね……」
「…そんなものは、これからいくらでも作っていける。
良かったら、今から、ディサさんの家に行ってみないか?」
ヴェールは小さく頷いた。
「まぁ、ヴェール様…!」
「ディサさん…いろいろとお世話をおかけしました。」
「いいえ…それよりも、ヴェール様…お身体の方は大丈夫ですか?」
「ええ…」
「では、赤ちゃんに会ってやって下さい。」
赤ん坊は、小さな揺り篭の中ですやすやと眠っていた。
傍らにはサリーが座っている。
「ついさっき眠った所なんだよ…」
赤ん坊の顔を見ていると、ヴェールの瞳にまた熱いものがこみあげた。
ジネットはこの子に自分の面影を残してくれた。
それは、ヴェールに、嬉しさと悲しさの混じりあう息苦しい愛しさを感じさせてくれるものだった。
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