「それはお気の毒に…」

「さすがにその人にはヴェールの事情もここのことも言えないから、今は親戚の家に行ってるふりをして近くの町で待ってもらってるんだ。」

「そうだったのですか…」

「ところで、ディサさん…
ネリーさんのお墓はどちらにあるのでしょう?
ぜひ、参らせていただきたいのですが…」

「…明日はちょうど満月…
マイユ様の所へは、明日、ご案内致しましょう。
では、私達はこれで…」

満月がどういう関係があるのかはわからなかったが、その理由を訊ねる間もなく、三人は屋敷を後にした。







「ヴェール、森の民の間では墓を訪ねるのは満月の夜と決まっているのか?」

「私も詳しいことはわからないのですが、もしかしたらそうなのかもしれませんね。
実は私もまだお墓の場所を知らないのです。」

「なぜだ?」

「…それが…ネリーさんを連れていった後、私は屋敷に通され、後のことは任せるようにと言われたまま、何も教えてもらえなかったのです。
何か、人間とは違った儀式のようなものがあるのか、そのあたりのことはよくわからないのですが…
私もあの時はレヴさんのことが気になり早く帰りたいとも思ってましたし、とにかく混乱もしてましたから、そのまま戻ってしまったのです…」

「そうだったのか…
では、ヴェールもネリーさんの墓に参るのは明日が初めてになるのだな…」

「そういうことになりますね…」



レヴの頭の中にはネリーの笑顔が浮かんでいた。
せっかく孫であるヴェールと再会出来、森の民の村へも戻ることが出来るかと思われた時に亡くなってしまうとは……


(運命とは皮肉なものだ……)



レヴは真実を何も知らないまま、ネリーの人生に深い切なさを感じた。


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