(何やってるんだろう、私…)



ほっとくつもりだったけど、時間が近付いて来ると、すいかの妖精のことが気になってたまらなくなって…
朝まで私を待ってたりしたら、やっぱり可哀想だし…



結局、私は夜中にすいか畑に向かった。



『人間〜!遅いぞ〜!』

あぜ道ですいかの妖精が手を振ってた。
遅いって、ほんの数分しか遅れてないのに、なんて几帳面な妖精なんだ。



「もうみつかったの?」

『こっち、こっち!』

私は言われるままに、すいかの妖精の傍に近付いた。
すると、妖精はなにやらおかしな呪文みたいなものを唱え始めて…



「ああっ!」

私の身体はすいかの妖精よりも小さくなっていた。



『はい、これでどう?』

一瞬で、あたりの景色が変わった。
赤い…しかも、なんだかとっても青臭いにおいがして、水っぽくて丸い…



「こ、ここはどこ?」

『気に入った?』

「だから、ここはどこって聞いてんの!」

『なんだ…気に入らないのか…』

「う…ぎゃあーーーー!!」



また妖精がなにかおかしな言葉を唱えたと思ったら、私は元の大きさに戻って、割れたすいかの帽子をかぶり、すいかにまみれて畑に座ってた。



『頑張って作ったのに…』

すいかの妖精はなんだか不服そうにぶつぶつ言ってた。



『でも、願いは叶えたから。』

「はぁ?」

『気に入らなかったみたいだから、これもあげる。』

すいかの妖精は、私の手に黒い種をぱらぱらと乗せた。



「すいかの種?」

妖精は、眉間に皺を寄せ、ゆっくりと首を振る。



『とびっきりおいしいすいかの種。』

「……そう、ありがとう。」







「ここはだめだね。
あまりにもいなか過ぎる。」

「そうかな。でも、環境は良さそうだよ。」



次の日、やって来た彼もやはりあまりに田舎過ぎて気に入らない様子だった。

確かに、すごいド田舎だけど、昨夜会ったあいつみたいな奴らがいるってことは、ここはとっても平和でのどかな町だってことだ。



「すいか畑をやるのも良いかもよ。」

「でも、こんな所じゃ、カフェのお客なんて来ないよ。」

「そりゃ、まあ、そうだけど…」



多分、ここには住まないけれど、あいつにもらったすいかはいつか必ず植えよう。
なんせ、とびっきり甘いすいかが実るそうだから…



〜fin.




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