(信じられない……)



まわりは田んぼと畑ばかり。
人もほとんどいない…



(なんでこんなところに?)



私は来月結婚することになっている。
二人の夢を叶えるため、いなかで農業をしながら、私は小さなカフェを経営することになり、候補であるこの地へやって来た。
ところが、そこは思ってた以上のド田舎で…
しかも、彼は急用が出来たとかで今日は来られないとのこと。
そんなことならもっと早くに言え!と、心の中で彼に悪態を吐きながら、今夜泊まる寂れた民宿を後にした。



(こりゃひどい…)



見渡す限り、畑と田んぼ…遠くにはうっすらと山の稜線が見えるだけ。
のんびりしたいなかライフを過ごしたいとは思ったけど、これじゃあ、カフェを作っても訪ねる者はいないだろう。



(あ…)



焼けつく太陽の下をしばらく歩くと、そこは広大なすいか畑だった。



(すっごい大きなすいか……ん?)




あぜ道をひょこひょこ歩く小さな者…
手には真っ赤なトマトを持って、それをおいしそうにかじりながら歩いてる。
私と目があうと、そいつは立ち止まり、私をじっとみつめた。



『まさか、あたいのことが見えてるんじゃないだろうな。』

甲高い電子音のようなおかしな声…



「見えてるけど…」

私がそういうと、そいつはおかしな声をあげてあたりをせわしなく動き始めた。



『大変、大変!人間にみつかってしまった!
あたい、すいかの妖精なのに、トマトが好きなことがバレてしまう。』



「心配しなくても、誰にも言わないわよ。」



それは嘘じゃない。
私は昔からおかしな者が見えてたけど、そのせいでずっといやな想いをしてきた。
だから、今日はこんなのを見たとか、そういう話はしないことに決めてるから。



『人間、本当?』

「うん、本当。
だから、心配しなくて良いよ。」

自称、すいかの妖精は、私の言ったことに戸惑っているのか、じっと私を見上げてた。



『人間、あたい、口止め料の代わりに、あんたの願いを叶える。
あんたのほしいものは何?』

「いいわよ、そんなの…」

『信用できない。だから、願いを叶える。』

ちょっと意地の悪い瞳で、すいかの妖精は私をみつめてた。
これはなにか言わないと引きさがりそうにない。



「そう、だったら、素敵な家でも探してもらおうかな。」

『わかった。じゃ、今夜0時にここに来て。』

「はいはい、ありがとう。」




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